着実に地歩を固めつつある“毎日乗れるスーパーカー”
ボディは軽量で高強度のアルミ製スペースフレーム構造を採用、ミッドシップレイアウトにより荷重配分は前後44:56とされた |
アメリカから帰国後、オフィスのガレーヂにR8があったのだから、気分はトニーだ。フェラーリならF1ブルゾンにスラックス(昔は黄×黒が定番だったけど)、ランボルギーニなら派手目のイタリアンシャツに刺繍の入ったブランドデニム、が“定番”コーディネートだろうが、R8には細身のダークスーツ=トニースタークスタイルが似合う。ひょっとすると、今の金融危機で最も影響を受けてしまったスーパーカーじゃないだろうか、といらぬ心配をしてしまうほど。
これが既存のスーパーカーだと、毎日乗れと言われて喜んだのも束の間、実際に予想される面倒のアレコレを想像してだんだん憂鬱になるものだが、R8にはまずそれがない。それだけスーパーカーオーラに乏しいと言う向きもあるだろうが、逆にそこが良い所だとも思う。事実、R8には狭い路地や商店街を億劫に思わせない度量の深さがあって、“毎日乗れる&ちゃんとスーパーカースタイル”の、スポーツラクシャリーなのだった。少なくとも、GT-Rより数百倍、オトナだ。
そういえば、最近ではほとんど注目されなくなったGT-Rとは違って、R8はデビュー直後より熱い視線を集めるような気がしてならない。信号待ちやコンビニのパーキング、サービスエリアなど、どこに停めても目立った。4リングのスーパーカーに、よほど興味があるらしく、みんなノーズからエンジンルームまでじっくり覗いてゆく。近寄り難いのが従来のスーパーカーだとすれば、R8は、そのクールな雰囲気とは裏腹に、けっこうウエルカムビームを放っているのかも知れない。
日本発売から約1年。100台以上を納車したとはいえ、まだまだ珍しい存在だ。最初は、あまりにも異物すぎてリアクションの取りようもなかったのだろうが、1年たってようやくアウディのスーパーカーだという認識が広まったのだろうか。ちゃんと目立つというのもまた、スーパーカーに必要とされる性能だから、R8は着実に地歩を固めつつある。
サイドブレードはエアディフレクターとして機能するだけでなく、エンジン搭載位置を強調。ボディサイズは全長4435mm×全幅1905mm×全高1250mm |
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