理想的な無指向性を実現!

HVT方式の凄さは薄いだけではない。もっとも驚いたのは、その無指向性ぶりだ。実験は、2枚の振動板でリンク機構を挟むように配置したドライバーユニットを3個搭載した家庭用の試作機で行ったのだが、音楽を再生中に、このスピーカーをクルクル回転させても、スピーカーの前を人が横切っても、ほとんど音の変化がないのだ。
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家庭用の試作モデル。振動板の正面で聴いても真横で聴いても、音が変わらないのに驚き

従来のスピーカーは指向性があるため、スピーカーの真正面で聞いた時はもっとも音圧が高く、斜めや真横から聞くと音圧は低くなるし、音質も変化する。そして指向性は周波数が高い音ほど強くなるため、とくにトゥイーターの取付角度には気を遣うものだ。ところが、このスピーカーなら真正面で聞いても、真横で聞いても音が変わらないから、取付角度を気にしなくていい。取付場所に制約が多いカーオーディオでは、ものすごく大きなメリットだ。

同口径クラスの薄型スピーカーより1オクターブ低い低音を再生!

また同じ口径に換算した従来タイプの薄型スピーカーと比べると、およそ1オクターブ低い周波数を再生できるという。これは、コンピュータ用を想定したポータブルタイプの試作スピーカーと、従来の薄型スピーカーとの比較で体験できた。試作スピーカーに切り替えると、いきなり低音の再生帯域が広がり、音楽が豊かに聞こえるのだ。それにもまして、音場がダイナミックに広がったのに驚き。左右のスピーカーの幅は約50センチ程度だったが、その幅を超えた広大な音場が再現され、奥行き感もしっかりと表現される。

カーオーディオでは、クルマの幅以上に音場の広がりが得られないことが多いが、このスピーカーを応用すれば、車内に広がりのある音場を再現できるはず。また、この技術をサブウーファーに応用すれば、従来のように大口径ユニットと大きなエンクロージャーが無くても、車内で豊かな低音再生が実現できるはずだ。その試作機として、リアトレイにセットするサブウーファーを展示。これは音を聴くことはできなかったが、厚みは10センチ未満。ラゲッジスペースを犠牲にせずに低音再生が可能なのは画期的だ。
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試作のサブウーファーはリアトレイにセット。楕円の振動板を2つのHVTドライバーで駆動する。それをリアトレイに3個搭載

このように、HVT方式は、これまでのスピーカーの常識を根本的に覆す画期的な技術。TS-STH1000だって、サテライトスピーカーとして使わず、ドアの中に組み込んでしまうことだってできるだろうし、ダッシュボードの上に置いて使ってもいいかもしれない。そして今後、この技術を応用したフロントスピーカーやサブウーファーなどさまざまな製品が登場すれば、カーオーディオの形態が大きく変わるかもしれない。

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