発売されたばかりのキャデラックCTSは、セビルなどこれまでのキャデラックと違って、一般のユーザーにとってもギリギリで選択肢に入るクルマだと思います。上級車クラスのラグジュアリーセダンではありますが、従来のセビルなどに比べ、ひとクラス下に位置づけられるクルマです。かつてのキャデラックはボディサイズの大きさからくる押しだしの強さから、柄の悪いユーザーにばかり支持される時代があり、さらにそうしたユーザーからも見捨てられたりしてきました。
でも今回のキャデラックCTSはこれまでのキャデラックとは違って、普通のユーザーが選んでもおかしくないクルマになりました。アメリカ車に特有の大きなボディサイズは、このCTSではリーズナブルなサイズに抑えられています。メルセデス・ベンツのEクラスと比較すると、全長こそ30mm長いものの、全幅はむしろ25mmも狭くて1800mmを切り、全高は10高いだけでほとんど同じです。角張ったボディなので、かなりワイドで大きなクルマにも見えますが、実際にはさほど大きなクルマではないのです。まあ、現在のEクラスは決して小さなクルマではありませんから、サイズ的にもギリギリで一般ユーザー向けと言ったらいいでしょう。ただ日本で最も問題になるのは全幅で、これが1800mmを切るCTSはタワーパーキングなどでも困ることが少ないはずです。
キャデラックCTSにはV型6気筒の2.6Lと3.2Lの2機種のエンジンが搭載されています。アメリカでは3.2Lだけの設定なのですが、日本向けには2.6Lエンジンも搭載されています。両方ともV型6気筒なので、キャデラックCTSらしい走りのフィールはほとんど共通といってもいいでしょう。パワー&トルクの数字には排気量に応じた違いがありますが、134kW、244N・mのパワー&トルクは、1600kgを超えるCTSのボディに対しても十分なものといえます。
ついでにいえば、キャデラックCTSには左右両方のハンドルが設定されていますが、これは無条件で右ハンドル車がお勧めです。キャデラックCTSの右ハンドル車は、ワイパーレバーが左で、方向指示器のレバーが右と、日本の右ハンドル車と同じ設定になっています。この点は高く評価していいでしょう。
そもそも日本の道路は右ハンドルで走るようにできています。最近では一部が左ハンドル車にも対応するようになったとはいえ、有料道路や駐車場の出入り口にあるチケット発券機など、さまざまな道路交通インフラが基本的に右ハンドル車に対応しているのですから、わざわざ使いにくくて他人に迷惑をかけることの多い左ハンドル車に乗ることはありません。いわゆる“外車”に乗っていることを強調したい人が左ハンドル車を選ぶようですが、今では左ハンドル車に乗っていると、単に頭の悪い人にしか見えません。