新型ステップワゴンに乗ると、従来モデルと大きく志向が変わっていることがわかります。
もちろんファミリーカーであることに変わりはないのですが、今までのモデルのように『子供』が楽しめるワゴンではなく『大人』がくつろげるワゴンとしているから。そしてこの『大人がくつろげる空間』=部屋、としてとらえているのも新型ステップワゴンの特徴でもあるのです。
今回はどこが部屋的で、どうやってくつろぎを演出しているかを中心にレポートをお届けします。
さて車内に乗り込み最初に従来型との大きな違いを感じたのが、大きくなったシート。シートバック、座面ともに大きくなりクッション圧もかなりしっかりとしたものになっています。「くつろいだシート、と考えるとフワフワなソファを連想しがちです。実際私達もそう考えて、実はフワフワな座り心地のソファを車内に積み込み、テストコースを走ったりしたんです。でもこんなに不快なものかと実感(笑)そんな初歩的なテストを繰り返し、ドライブ中にくつろげる張りのあるシートを作りました」と開発者の弁。そこまで今回はシートの開発に力を注いだとのことで、くつろぎの部屋を演出する大きな要素になっています。
ちなみにシートの座り心地は3列目であってもかなり◎。足元空間があるのはもちろん、座面の大きさもしっかりとあるので、身体が不安定にならなず落ち着いて座っていられます。
実際のところ3列目に座っていると、とてもこのクルマが5ナンバーサイズ、しかも全長は従来モデルよりも短縮されているのに驚かされます。まぁシートを大きくしたぶん、荷室サイズは若干小さくなっていました。3列目にはスライド機能もあるし、左右に跳ね上げ格納することもできるため(操作も軽くなってます)、それなりに調整は可能ですが、以前のようにバン感覚で使える感じではなくなりました。
この“バン感覚で使える感じではない”というのも、1つのキーワード。新型ステップワゴンのもう一つのテーマに『脱ミニバン』つまり箱のイメージを払拭するというものがあるのです。くつろぎの部屋を演出するには、やはり箱の中に居る感覚ではダメだというのです。
でも正直これを聞いた時「ボディが小さいのに、真四角の箱のように室内が広かったから人気があったのでは?」と思ったりも。実際に、その疑問を開発スタッフにぶつけてみると「確かにそういう意見もありました。でも箱の中に居る、または箱を運転しているようでヤダという、意見もありました。そこで箱のイメージをなくし乗用車感覚を強めつつも、従来通りの室内空間があればいいのではないか、ということになったのです」とのこと。
そこで採用されたのが、新しい車体構造の低床フロア。もともとホンダは低床フロアを得意としていて、すでにフィットやオデッセイなどにも採用しているのですが、さらに燃料タンクやサスペンション等を工夫することで、かなり低くフラットなフロアを実現。乗り込みのしやすさは、従来の比ではなかったです。
そしてこのフロアを低くしたことで、もっとも“箱”的なイメージを与えやすいAピラーを寝かすことが出来、乗用車的なデザインにしつつも居住空間を確保できたというのです。
運転席に座ってみると、確かに箱的なイメージは薄いです。ただそれはピラーのデザインうんぬんの前に、目の前に広がる先進的なインパネの影響も大きいかと。インパネの奥行きもずいぶんとあり、一見車幅感覚がつかみにくそう? なんて思ってみたものの、実際に走ってみるとそんなこともなく、見た目以上にクルマは動かしやすく、車幅もつかみやすかったです。
その要因の一つに前後上下に40mmも動くチルトス&テレスコピックが採用されていることもあり、ポジションがとりやすく確実な視界が確保できたから。こういったポジションのとりやすさもあり、大きい“箱”を乗り回しているという感覚とは違い、確かに限りなく乗用車に近い感覚でドライブができました。このポジションのとりやすさは女性には嬉しい部分。「実は新型ステップワゴンで部屋、を意識した理由の一つに、女性、とくに忙しいお母さん達にリラックスできる空間を与えたい、ということもあったのです。そのためこのテレスコ機能もそうですが、女性を意識した機能も色々とあります」とも話してくれました。
この女性に嬉しい機能・・に関してはPART2のほうで詳しく紹介しますね。
乗れば乗るほど、今までのステップワゴンとはずいぶんとイメージも乗った感じも違う新型。オデッセイが良いけれど、ちょっと室内がタイトな雰囲気だし3ナンバーだし・・と踏みとどまっていた人に、かなりオススメできる気がします。ただ逆に荷物もいっぱい積んで・・と今までのステップワゴンのミニバンらしさを求めていた人には、物足りなく感じそうです。ここが新型ステップワゴンの好き、嫌いが分かれるところでしょう。
そして個人的に一番注目していたのがオプションのフローリングフロアです。
見た目は完全たるフローリングなんだけど、正確にはフローリング調の樹脂でできたフロアで、本物の木目がプリントされているんです。だからフローリンの溝も、実際に触ってみると凹んでなく完全なフラットなんです。
また実際に乗り込んでみると少し柔らかさがあって、試しにヒールで車内に乗り込んでみたのですが、まったく滑ったりすることもなくて歩きやすい。
となると逆に心配になるのが、傷の問題。これも表面は硬質クリアコーティングされているので、傷がつきにくくなっています。本当ですかぁ? と疑っていたら「瓶ビールのケースにビールを全部入れた状態のものを、このフローリングの上で引きずって降ろしたりというテストを何回も繰り返し、このテストで傷が付かないようにしました」とのこと。耐久性も十分に考慮しています、ということで補修に関しては現在のところ部分補修も含め考えていないとのこと。「あらゆることは想定してテストをしたので・・」というのですが、想定外のことが起きるのも世の常。このあたりは、早めに対策しておいてくれていたほうが購入する側も安心ですよね。
ところでもう一つ気になっていたことが“音”の問題。フローリングならオーディオの音とか振動とかが響くんじゃないかと思っていたのですが、実際に乗ってみると全然そんなことはなく、足に伝わるようなビリビリ音もないんです。「実はカーペット仕様よりも、このフローリングのほうが吸音性が高いため、静粛性はわずかに高いんです」と開発スタッフのかたのお話。
そのカラクリは、フロアパネルの上に制振材さらに硬質フェルト材、軽量ボード、フローリング表皮、膠質クリア層と4層構造になっているからで、カーペットより厚くなっている構造のおかげで吸音性が高められているわけ。ただしだからといって、フロアの高さが高まっているわけでなく、室内高はカーペットでも同じになっています。実際に使ってみると、良くできていました。
埃もたたないし、汚れたらすぐ拭けるし、かと言って滑らないし、静かだし・・とかなり魅力的なアイテム。子供がいたり、ペットを乗せることが多い人にはオススメですね。まさにいま流行りの部屋という感じなんでしょうね。
さて実際の使い勝手や、もう少し街中でドライブした印象などはpart2でお伝えしますね。
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