乗り心地は、半年前にフランスで乗ったクルマよりもさらにソフトに感じられた。とくに低速で段差を通過したときのショックがマイルドになっている。ストローク感は以前ほどではないが、路面の凹凸をジワッと吸収するサスペンション、剛性の高いボディ、厚みのあるシートが織りなす優しさは、まさにシトロエンそのものだ。
ステアリングは低速では電動アシストっぽいサラッとした感触だが、ハイドロ系シトロエンに似ているともいえる。コーナーでのロールはかなり大きいのに、4本のタイヤが粘り強く路面をグリップするところは、忘れかけていた味が戻ってきたような感じだ。そして直進安定性もまたシトロエンの伝統どおり。激しい暴風雨の中でも、レールの上を走っているような安定感をもたらしてくれるのには驚かされた。
C3はシトロエン・ジャポンが誕生してから初めてのニューモデルであり、日本でこのブランドを復活させるという大役を背負わされている。でもC3なら、きっちりと役割を果たしてくれそうな気がする。コンパクトカーにふさわしい機能とリーズナブルな価格を備えたうえで、デザインも走りも他のクルマとはっきり違う、シトロエンだけの世界を持っているからだ。最大のライバルを挙げるとしたら、パリサロンで発表されたばかりのプリュリエルかもしれない。