驚いたのは、あくまで自然に座れる着座姿勢だ。まるでマトモになった。カウンタックやディアブロは、それこそ手足の短い平均身長辺りの日本人には拷問さながらのドライビングポジションであったが、ムルシエラゴはまるでNSXのように座れる。シートのアジャスト範囲も非常に広く、ベストポジションが見つけやすい。これで、相当心理的負担が解消された。
辺りを見渡して、不審なスイッチやボタンがないことを確認し、おもむろにキーを捻る。
“シュシュシュスシュヴォヴォバーン!!!!”
その身を一瞬震わせたかと思うと、いともカンタンに軽やかで甲高い咆哮を奏でる。ランボV12の音には違いないが、調律の効いた、乱れのないサウンドだ。ノーマル状態としては、最も好ましい音だと言っていい。