さまざまな側面を見せるPDK
まずは乗り込んで、ハンドルを握って、ちょっと閉口……。まず、グリップが異様に太いのが気になります。スポークの左右に設けられたステアリングスイッチは、いつぞやのように自然に触れてシフトチェンジしてしまうようなことはなさそうですが、一般的なものとは逆で、左右とも表面側を押してアップ、裏側を押してダウンという設定。ちなみにフロアセレクターも押してアップ、引いてダウンとなっています。
また、PDKはティプトロニックのようにトルコンを持たないため、車庫入れ時など微低速で動くときには、ATほどスムーズではありません。ましてや微妙に上り坂だったりすると、けっこう気を使います。
しかし、ごく普通に走ると、シフトチェンジは素早く、変速ショックは非常に小さく、緩加速の走りをした限りでは、悪い部分はほとんど気になりません。それはオートモードでもマニュアルモードでも同じことです。
ところが、標準モードのまま、ある程度アクセル開度の高い(概ね開度30%以上)運転をすると、シフトアップする手前で半クラッチのような状態になり、一瞬間エンジン回転数が上がって、それからつながるという感じになりがち。ダイレクトにつながるまでに少しタイムラグがあるのです。たとえばシフトダウンして交差点を曲がって、さあ加速!というようなシチュエーションで、踏み込んでからワンテンポ遅れてつながることがあります。
一方、スポーツモード~スポーツプラスモードを試すと、6速より上にシフトアップしなくなり、高回転をキープする制御となります。ワインディングで試すと、こちらのほうがPDKの本領発揮という印象。シフトアップが非常に素早くなり、トルクを途切れさせることなく次のギアへと移るようになります。
ただし、このモードを街中で使うと、エンジンの高回転域を多用するので騒々しいし、いうまでもなく燃費も悪化するし、アクセルのオン/オフで過敏に反応するので、メリットはありません。
肝心のエンジンには本当に感心させられました。踏み込んだ瞬間から太いトルクを発生し、そのままトップエンドまで微塵のよどみもなく吹け上がります。高回転型のキャラクターと、低中速域の力強さが同居した、非常に素晴らしいエンジンです。
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