ハイブリッドカー/ハイブリッドカー基礎知識

アルファード01 アルファードのハイブリッド(2ページ目)

トヨタの本格派ハイブリッド第三弾としてアルファード・ハイブリッドが登場した。エスティマ・ハイブリッドと共通のシステムを採用。ここではハイブリッドシステムの概要を紹介してみた。

執筆者:川島 茂夫

前輪駆動系のレイアウトはエンジン/モーターがプラネタリーギアセットを介してCVTに繋がっている。プラネタリーギアは変速行わずに、エンジンとモーターの負荷配分及び停止時のエンジンによる発電、クラッチ機能、後退時のリバースギアの機能を担当する。

ここがアルファードのハイブリッドシステムの最も難解な部分だ。

エンジンはプラネタリーギアセットのサンギアに入力。同じくモーターはキャリア(プラネタリーギア)へ。プラネタリーギアはダブルピニオン(ギア2個)を用いる。出力側はクラッチを介してリングギア、同じくキャリアと繋がっている。リングギアには固定(停止)用のクラッチ(ブレーキ)が組み合わされる。

エンジン稼働時のアイドリング状態では、出力側のリングとキャリアのクラッチ、リングギア固定用クラッチのすべてがオフになり動力は伝達されない。

エンジン走行時は出力側のリングとキャリアのクラッチがオンになり、この状態ではリング/キャリアともにサンギアと一体となって回る。つまりCVTに直結した状態になる。モーターが稼働した場合は、キャリアに入力されるので、そのまま電動パワーアシストされる。

なお、急発進時はモーター/発電機によるトルク増幅(変速)制御を行う。この状態ではキャリアの出力側クラッチがオフ、リングの出力側クラッチがオンになる。モーターが無負荷の状態ならばエンジンの力はすべてキャリアの空回りで逃げてしまうが、モーターに負荷が掛かった状態では減速しながらトルクが伝達される。モーターの負荷は状況によって駆動と発電の両方でコントロールされている。

エンジン停止/モーター走行時は出力側キャリアクラッチのみオン。サンギア(エンジン)が停止しているが、リングギアがフリーになっているので、キャリア(プラネタリーギア)はモーターからの入力をそのまま出力軸に伝え、CVTを介して駆動軸へと伝わる。

後退時はキャリアの出力クラッチがオン、リング固定用クラッチは適宜オンとオフで制御する。モーター走行の場合はモーターの回転方向が逆になる以外は前進と同じだが、エンジン稼働状態ではリングが固定されてキャリアから出力されるが、プラネタリーギアがシングルならば減速して前進方向に回転するが、ダブルピニオンなので逆転方向に回る。エンジン/モーター走行の過程ではリング固定クラッチは断続的に制御されたりする(らしい)。

トラクションコントロール機能では、前輪がスリップするとフロントドライブユニットのモーター/発電機を発電機として使用して、エンジン出力を抑制すると共にリヤドライブユニットのモーターを稼働して4WD走行を行っている。

かなり分かりにくい解説になってしまったが、これでも概要レベルの話。もっと微妙なことをやっているらしいが、短時間の取材でそこまで理解するのは不可能。それにこれ以上考えるのは知恵熱ものでもある。いずれにせよ、モーターとエンジンを組み合わせれば速くて燃費がよくなるという単純なものではなく、実用品として磨かれた性能を実現するための制御技術には脱帽させられる。

最後にオマケネタとして、バッテリーの使い方について。車載モニターで見ると、プリウスのバッテリー残量はかなり大きく変化する。つまり、モーターの負担がかなり大きいわけだ。しかし、アルファードは満充電から少し少ないくらいの状態がほとんど。エンジン走行をメインに、燃費向上と急加速でモーターが補佐するという感じだ。

これで心配になるのはバッテリーのコンディション。ニッケル水素に限らず、複数セルの二次電池ではセルの状態のバラツキなどで容量や出力(放電)特性が変化。極端な場合は寿命そのものに影響する。長く性能を維持するためには定期的なコンディショニングが必要である。

初期のプリウスではバッテリーコンディションが著しく悪い場合は、整備工場でのコンディショニングを行っていたようだが、現在では走行中に満充電と完全放電(0Ahではなく、使用できる電流が0の状態)などを行いコンディションを整えている。この辺りの技術は大出力急速充電型高密度二次電池を長寿命に使うための要点であり、トヨタのハイブリッドの技術の先進性のひとつとなっている。

バッテリーについての余談。
バッテリーは正しくはバッテリーパックで、小さな電池を沢山組み合わせたものと考えれば分かりやすい。一個の電池をセルと呼び、例えば12V3000mAhのバッテリーパックならば1.2V3000mAhの単セルを直列に10個繋いでいる。二次電池とはいえ、残存電力量が少なくなると出力電圧が低下する傾向にあり(メモリー効果ではない)、安定した性能を発揮するにはセル毎の充放電状態を一致させるのが好ましい。ところが半端な充放電を繰り返していると、セル毎に充電量(蓄電量)がばらついたりする。他にも性能を低下させる要因があり、それを取り除くのがバッテリーのコンディショニング。なお、一般的に言われるメモリー効果は最近のニッケル水素電池ではほとんどないと言われている(内部の化学的な変化による容量減少、つまり本当のメモリー効果はある)。

また、二次電池を駆動用バッテリーと誤解している人も多い。電装系のふつうの12V鉛バッテリーかあるので、これが一次で、駆動用は二次、というのが誤解の原因のようだ。二次電池は充放電できる電池のこと。一次電池は乾電池のように充電できないタイプ。ニッカドとかニッケル水素、携帯電話によく使われているリチウム・イオンなどの充放電型電池が二次電池である。
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