プラド&サーフの記事について、読者の方から、無理にひねった言い回しで読みにくい、とのお叱りのメールを頂いてしまった。大いに反省するところなのだが、ちょっと言い訳をさせてもらえば、プラドをどう捉えるかは未だに悩むところがあり、試乗前でもあった紹介記事では、そこの部分がもろに出てしまっている。
ハードクロカン性能を求めた本格的なオフローダーが一般性が低いのは、今さら説明する必要がないだろう。例えば、フレーム式シャシーは頑丈なだけでなく、ボディの交換さえも可能な補修性のよさも特徴てあり、本格オフローダーを必要とする用途ではそれらも必須条件のひとつとなる。しかし、スペース効率や重量、重心高などのキャビンユーティリティや経済性、走りの質など乗用車に求められる広範囲の部分でハンデを背負ってしまう。
ゆえに、例えSUVであっても実際には如何に一般的な乗用車に近づけるかが要点になる。もちろん、アウトドアスポーツやレジャーに適応できる悪路走破性は必要だが、その用途でトライアルもどきのオフロード走行での走破性や耐久性は求められない。
新型プラドを試乗しての印象だが、限界踏破性での妥協がないのが要点のひとつとなっている。ロックセクションの登坂などなど、オフローダーマニア向けのコースでも試乗してみたが、4輪のトレース性の良さや著しく荷重バランスが崩れた時のトラクションの維持など、オフロードにおけるポテンシャルは「本格派クロカン」に相応しいもの。さらに、ヒルダウンアシスト機能を付加したトラクションコントロールにより、極めて慎重なコントロールを必要とする悪路の急降坂でさえ、何事もなくこなしてしまう扱いの容易さを加えている。特別な運転技量や知識なしで、どこまで限界踏破性を高められるかも、新型プラドの開発の要点のひとつなのだ。
しかし、その性能が発揮される場所は、多くのユーザーには無縁の世界である。一般的なアウトドア派に必要とされるのは乗用車としての使い勝手のよさ、実はプラドの評価で悩ましいのはここなのである。
プラドには3タイプのエンジンと2タイプのボディが用意される。走りにおけるこれらの特徴をかいつまんで述べるならば。
ターボディーゼルは低回転域のトルクは優れているものの、高回転域での加速の伸びや踏み込み直後の瞬発力が今ひとつ。ターボディーゼルではありがちな特性だが、トルクの急激な変化が抑えられ、オフロードでもオンロードでも扱いやすい特性に仕上がっている。
ガソリン仕様には2タイプがあるが、ベーシック仕様となる2.7Lでも必要にして十分な性能を持っている。全開加速では車重を感じさせるのだが、高速長距離走行でも山岳路走行でも目立って非力に感じることはない。4気筒らしいトルクの立ち上がりのよさもあり、細かなスロットルワークにも素直に追従。ここが、一般的な走行パターンでパワースペック以上の実力を発揮するポイントである。
「2.7L車で十分じゃないか」と思ったものの、V6の3.4L車に試乗すると、「やっぱり、これだな」となってしまう。パワースペックでは2.7L車よりも最高出力で35ps、最大トルクで6.0kg-mの差がある。因みに最大トルクの発生回転数は2.7L車よりも400rpm低い。全開加速性能はスペックの違いどおり、およそ2割増しといったレベル。3.4L車ならば、もはやヘビー級の車重を感じさせられることはほとんどなく、市街地走行から高速、山岳路でも見た目に似合わない俊足振りを発揮する。
しかし、両車の違いは単純な速さだけではない。V6ならではの高回転域の伸びやかさ、どの回転域でも滑らかなドライバビリティ、しかも荒ぶるような振動や騒音はない。ドライブフィール全体の質感が向上しているのだ。走りの車格感が違うといってもいいだろう。
この違いは加速性能やドライバビリティだけではない。フットワークも搭載エンジンによって異なるのだ。2.7L車は軽量な4気筒を採用することもあり、同仕様の3.4L車よりも軽快である。操縦特性ではノーズの回り込みや操舵反応が鋭くなり、乗り心地では加減速や路面のうねりに対してピッチやロールが早くに変化する。ただ、軽快な分、挙動の落ち着きとかしっとりした味わいも少ない。3.4L車と比較すると「少々軽薄」といってもいいだろう。