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いつか世界を変える若獅子レーサーたち!(3ページ目)

4輪レース、2輪レースの第一線で活躍中の若手レーサーを紹介。低迷するモータースポーツ業界の「宝」とも言える若手レーサーたちの魅力と彼らが成長してきた背景に迫ります。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

世界選手権Moto2初代ウイナーの富沢祥也

2輪レース界で今最も注目を集める選手は、世界選手権「Moto2(モトツー)」クラスを戦う富沢祥也(とみざわ・しょうや/19歳)です。

250ccクラスに代わって今年からスタートした600ccの「Moto2」の初戦、カタールGPで初代ウイナーになったことで今年一気に注目される存在になりました。
カタールGPで優勝した富沢
【写真提供:本田技研工業 】

富沢が戦う「Moto2」は初年度にも関わらず、常に40台以上が出場する大激戦区になっており、ライダーも格上の「MotoGP」クラスの経験者がたくさん居るハイレベルなレース。しかも、トップグループは常に抜きつ抜かれつを展開しながら争う、とんでもない激しい戦いになっているのです。

そんな中で初代ウイナーが日本人ライダー、しかも世界選手権への挑戦まだ2年目の富沢が優勝したのは驚きでした。昨年春に高校を卒業したばかりで、それと時を同じくしてヨーロッパに身を移し、世界選手権GP250クラスに挑戦。僅か1年で英語をマスターし、記者会見では19歳とは思えない実に堂々とした英語での応答を披露していました。

富沢がポケバイのレースを始めたのは3歳の頃。ポケバイ、ミニバイクのレース時代から常にレースを席巻してきた才能が、ようやく世界の舞台で開花しようとしています。大人顔負けの落ち着きぶりがあると思えば、喜びの感情を爆発させる姿と愛嬌が印象的でバイクレース界の次世代スターになる要素を富沢はいくつも持っています。
富沢の走り。Moto2はホンダ600ccエンジンを全車が使用し、車体はオリジナルフレームという新しいレース。富沢が使用する車体は「スッター」というスイスのメーカーが製作したものです。
【写真提供:本田技研工業 】







【訃報】
(追記)9/5(日)富沢祥也選手はイタリア・ミサノで開催されたMoto2決勝レースの途中に転倒し、不運にも後続の車両に跳ねられ、搬送された病院で永眠されました。今後の活躍が大いに期待されていた選手で、ツインリンクもてぎでの凱旋レース「日本グランプリ」を多くのファンが楽しみにしていただけに非常に残念です。富沢選手のご冥福を心からお祈りいたします。

富沢祥也 公式サイト




20歳にして鈴鹿8耐で優勝、高橋巧

国内バイクレース界で、最も注目を集める若手と言えば今年の「鈴鹿8時間耐久ロードレース」で優勝した高橋巧(たかはし・たくみ/20歳)でしょう。
高橋巧【写真提供:MOBILITYLABD 】

ベテランライダーたちが何年かかっても手にできないほどに難しい「鈴鹿8耐」の表彰台。高橋巧は2008年(18歳)に初出場で3位、2009年(19歳)は代役出場だったにも関わらず3位に輝き、2010年は若干20歳にして、ついに優勝を飾ったのです。同じチームの第3ライダーとして登録されていた選手が18歳だったため、最年少優勝という記録にはなりませんでしたが、それでも20歳という若さでの「鈴鹿8耐」優勝は大したものですし、初出場から3年連続で表彰台に登っているというのは驚きです。

真夏、猛暑の8時間耐久レースはとにかく過酷な戦いです。世界的にみてもここまで過酷なレースというのも珍しいでしょう。しかも、鈴鹿8耐はメーカーワークスの本格的なマシンも出場する特殊なハイスピード耐久レースでですから、ライダーのカラダへの負担は他のレースの比ではないと言われています。

高橋巧が駆るのは1000ccのスポーツバイクのレース仕様。最高速は300km近くに達する。
【写真提供:MOBILITYLABD 】

高橋の若さが勝利の最大の要因かというとそれだけではありません。確かに若いライダーは体力的な部分では40代のベテランに比べて余裕はあるかもしれません。しかし、鈴鹿8耐の過酷さは体力面の優劣で語れるほど簡単なものではないのです。

鈴鹿8耐で優勝するためには決勝レースで周回遅れになったマシンをバンバン抜いて行かなくてはいけません。ペースを維持しながら遅いマシンをパスして行く作業は相当な集中力が必要で、1時間のロングラン中に全く気を抜く事ができません。体力面ももちろんですが、それ以上に集中を切らさない精神力が一番重要になってきます。

また2輪レースは転倒した時に怪我をする危険性も高く、一瞬のミスや不運がレースを台無しにしてしまいます。高橋もレースウィークの金曜日の予選中に他のマシンのパーツが膝を直撃するアクシデントに見舞われました。病院でテーピングを施してはもらいましたが、高橋はコーナリングの度に感じる強烈な痛みに耐えながらマシンを前に進め、優勝を飾りました。彼はとてつもない精神力の持ち主です。
8耐の優勝が決まった瞬間、いつもはマイペースな高橋もさすがに泣き崩れました。ゴールの瞬間、8時間の集中だけでなく、およそ1ヶ月に渡る準備期間の長い緊張から解放された瞬間でした。

高橋巧はこの3年間、鈴鹿8耐を通じて大いなる成長を遂げています。このまま全日本チャンピオンを獲得できれば、世界へと羽ばたく可能性が高まることでしょう。

【高橋巧の走りが見られるレース】
全日本ロードレース
第5戦 (9/25,26) 岡山国際サーキット
第6戦 (10/16,17) ツインリンクもてぎ

高橋巧 公式サイト

次のページでは若手選手が今、光り輝いている理由をもう少し掘り下げます。

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