3.4L/V8/FR統一で接戦&好バトルのGT500
ホンダ、ニッサン、レクサス(トヨタ)の3大自動車メーカーの戦いの舞台であるGT500クラスは、今年出場する全車がFR(後輪駆動)、V型8気筒、排気量3.4リッターNAを使用するレギュレーションの統一化が実現しました。今年のGT500クラスには、ホンダが「HSV-010GT」という威信のニューマシンを持ち込み、レクサスは昨年から規定に合わせた「SC430」を熟成させ、ニッサンは3.4リッターV8エンジンに換装した「GT-R」で戦うことになったわけですが、個性あふれる3車種が接戦を演じています。
マレーシア・セパン戦GT500クラスのスタート 【写真提供:SUPER GT.net】 |
これまでは3メーカーが異なるアプローチのGTマシンを投入し、メーカー間の政治的な駆け引きも見られましたが、統一化された今年はそれがうまく作用し、3メーカーのマシンはまさに実力伯仲。これまでにない接近した戦いを実現しています。今年のGT500はファンにとっては分かりやすく、見応えがあるものになっているといえますね。関心が高まるのも当然です。
現規定に合わせて2年目で熟成されているSC430。チームルマンが走らせる「ENEOS SC430」は優勝こそないものの着実にポイントを重ねているので、後半戦は目が離せない存在。 【写真提供:SUPER GT.net】 |
GT300クラスは頻繁に順位が入れ替わる!
また、世界のスポーツカーが集うGT300クラスも今年は例年以上の面白さを見せています。「ガライヤ」「紫電」「Vemac」といったプロトタイプ的なマシン、「カローラ・アクシオ」や「レクサスIS350」「レガシィ」といった羊の皮を被ったレーシングウルフ的なマシンに加え、今年は純粋なGTと呼べるFIA-GTの規定に基づいた「フェラーリ」「アストンマーチン」「ポルシェ」などが増加しました。今年GT300クラスに登場したアストンマーチンは第3戦富士で3位表彰台に登壇。ドライバーは歌手としても活動する吉本大樹と、かつてAll Aboutモータースポーツの前任ガイドだった松田秀士のコンビ。 【写真提供:SUPER GT.net】 |
一番最後にあげたFIA-GT規定の車両は市販車により近いGTカーで、コーナリングではプロトタイプ的な車両に劣りますが、エンジンへの吸入制限を行うエアリストリクターの径が大きく設定されているため、ストレートスピードが速くなるという利点があります。こういった「直線番長」なマシンと「コーナリング」マシンが混走し、さらにはGT500クラスのマシンに道を譲りながらのバトルになるおかげで、いつもギリギリの状態の好バトルが見られるわけです。ドライバーのテクニックだけでなく、意地のぶつかり合いのようなものも垣間見れ、非常に面白いです。
大混戦のGT300クラス 【写真提供:SUPER GT.net】 |
この不況の中でよくぞグリッドに並んだ!
今年の「SUPER GT」は不況で危惧された自動車メーカーの撤退もなく、全盛期には及ばないにしても多くのエントリーを集めることになりました。とはいえ、各チームの台所事情は非常に厳しいものになっているのが現実でしょう。自動車メーカーからレーシングカーを貸与されるGT500クラスのチームも、この不況の中ではスポンサードを得るのも簡単なことではありませんし、ましてや自動車アフターパーツの販売を生業とするチームにとっては、本業が非常に苦しい中で参戦していることになります。
開幕戦のスターティンググリッド 【写真提供:SUPER GT.net】 |
限られた予算の中でコストを切り詰めて何とかスターティンググリッドにマシンを並べているチームも少なくないといえ、この大変な状況の中でもレースに出場し、出るからには絶対に安っぽいレースは見せないチームには本当に頭が下がります。
30台を超える台数が常に出場しているからこそ「SUPER GT」は今も華やかです。それと同時にそれぞれのチームが一生懸命にレースをやっているからこそ、ドラマとバトルの連鎖が生まれているといえます。「SUPER GT」を観る側は好レースを展開するチームに対してもっともっと敬意を評すべきかもしれませんね。