いかにウイングに効率よく空気を当てるか?
レーシングカー工場で日夜行われている風洞実験は空気の流れをコンピューターで読み取ることが目的だ。簡単にいえば、いかに効率よくウイングに空気を当てて「ダウンフォース」を稼ぎ出せるかを実験しているのである。飛行機のように横に広がる形で翼が付いていれば、空気の流れを邪魔するものはないのだが、レーシングカーは前後にウイングを装着しており、サスペンションアームもあればタイヤも付いているしで、空気の流れを妨げるものがたくさん存在する。そこで空気の流れをうまく整理し適正なダウンフォースを得ようと、様々な形状の突起物、空力パーツが付けられ、近年のレーシングカーは時にイビツな形にもなっていたりする。
マシン全体に様々な空力パーツが取り付けられた2008年のF1マシン 【写真提供:Bridgestone Motorsport】 |
ディユーザーを利用してダウンフォースを得る。 |
2009年、マクラーレンが使用した「ダブルデッカーディフューザー」。ウイング下のディフューザーが二段構造になっている。 【写真提供:Bridgestone Motorsport】 |
2009年のF1で一部のチームが装着した二段構造の「ダブルデッカーディフューザー」が問題視されたが、議論の末、合法となり、後に全チームがこれを採用したことがあった。これを採用したチームとそうでないチームで、大きな差ができていたのも事実で、ディフューザーによる空力処理もレーシングカーの重要なポイントになっている。地味ではあるが、是非これからはバックショットも気にしながら見て頂きたいものだ。
タイヤはとっても重要なもの
次に紹介したいのがタイヤである。というか、最初に紹介するべきかもしれないくらいに重要なパーツである。タイヤが無ければクルマではなく、レーシングカーにもならないのは皆さんもお分かりの通り。タイヤはあって当たり前のものであるが、実はレースではタイヤの性能が非常に重要なファクターになっている。街乗りのクルマでは、多少ゴムが減っていようが気にせず乗っている人が多いと思うが、レースではそうもいかない。タイヤはレーシングカーのハイエンドな性能を路面に伝え、前に進む力を生み出す最後のアウトプットの部分であり、この効率が最適でなければレーシングカーの高性能ぶりは全て無駄になってしまうのだ。
市販車に比べて太いF1のタイヤ。 【写真提供:Bridgestone Motorsport】 |
一方で、柔らかいタイヤは強烈なグリップを得られるのと引き換えに、摩耗も早いことが難点となる。市販車のタイヤではそれこそ2年、3年かけて使うのはザラだが、レース用のタイヤでは予選アタックの1周だけのために使われる強烈なハイグリップのタイヤも存在する。しかし、決勝レースにおいては毎周ごとにピットインしてくるわけにはいかない。そのためレーシングタイヤではグリップ力が高く、摩耗しにくいタイヤが理想的だ。タイヤメーカーでは、そういった相反する特徴を両立させるための技術開発が日夜行われているのである。
走行を終えたタイヤはすぐに表面温度などが計られ、入念なチェックが行われる。メーカーにとっては品質管理も重要な仕事。 【写真提供:Bridgestone Motorsport】 |
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