S耐:小型車クラス導入で新しい魅力が誕生
市販車をベースにしたレース車両で争う耐久レースの「スーパー耐久」は今年、目玉の「十勝24時間レース」がサーキットの経営破たんにより中止となった。さらに相次ぐ強力なスポンサーの撤退で、テレビ中継が無くなったばかりか、シーズン途中での有力チームの撤退も相次いだ。しかし、シーズン開幕前には多くのチームが厳しい台所事情で参戦が危ぶまれる中、何とかレースシリーズとして形にすることはできた。「スーパー耐久」には来年からヴィッツ(トヨタ)、スイフト(スズキ)などのコンパクトカーを対象にした「ST5」クラスが新たに誕生する。ヴィッツレースやマーチレースに出場していた車両をベースにマシンを製作することができ、これまでワンメイクレースなどを楽しんできた選手やチームにとっては参戦の大きなチャンスとなる。
ヴィッツレースに出場していたドライバーには朗報? |
ランサー・エボリューションXも新世代台のスポーツ車両。今年、エボXを走らせた名門テスト&サービスが参戦を中止。現在はエンドレスのみがエボXを使用し、新規でエボXを走らせるチームは現れていない。 |
「スーパー耐久」はN1耐久として存在した頃からハイエンドなアマチュアレース的な存在であった。いつの間にか高性能なマシンとトップドライバーが闘うレースになり、レベルが上がって大きなイベントとなっていった。しかし、コンパクトカーのクラスが新設されることやアマチュアドライバーが参戦しやすくなることで、敷居は低くなるが新しい魅力が生まれくるのも事実で、本来の姿に戻りつつある今後の展開を見守っていきたい。
来年は夏にマレーシア・セパンで開催される耐久レースに組み込まれる形でスペシャル・ステージが開催され、東南アジアの参加者との交流も盛んになっていくだろう。
マレーシアの石油会社ペトロナスのサポートを背景に3年間、スーパー耐久に参戦したBMW Z4は来年も見られるか? |
閉塞感に満ちたシーズンオフは好転するか?
ホンダに続き、トヨタもF1から撤退というニュースは日本国内のレース業界にも大きなショックを与えた。エコの時代に国内のモータースポーツに対する風当たりは非常に厳しく、また深刻で長引く不況もあって各チームの台所事情は想像以上に厳しいものになってきている。金回りがそこそこ良かったおかげで、国内のレース界は一時的な再興を見せたが、厳しい経済状況は今やレース界に鋭い牙を向けている。僕はレースの業界に入ってまだ10年も経っていないが、これまでも国内のレース界には様々な矛盾や疑問を感じてきた。本当は真剣に議論するべきところ、ファンにキッチリと伝えるべきところがいつの間にかウヤムヤになり、そのまま放置しておいたツケが回ってきたとも言える。これはレース界に限らず、日本という国の悪い癖でもある。
しかし、問題をウヤムヤにしてしまう悪い癖は時にレース界の大きな力にもなることもある。毎年、年明けの段階で「どうなるか分からない」という不透明な状況であってもシーズン開幕直前の3月上旬には何とか形になることが多く、例えそれがマイナスな状況のスタートであっても夏を過ぎる頃にはそれさえも忘れるほどにしてしまう不思議なバイタリティがレース業界には存在する。結局のところ、みんなレースが好きだから細かいことは気にせず、ガムシャラに頑張ってしまうのだ。これはレース業界の良い部分でもある。
でも、シーズンオフにレースファンをヤキモキさせてはいけない。ヤキモキさせている間にファンの気持ちは離れて行ってしまいかねない。オフ中にファンは明るい知らせを毎日待っているはずだ。だからこそ、レースのオーガナイザーやチーム関係者には小さな事でも良いから情報をファンに提供して欲しい。ファンあってのモータースポーツである。厳しい年末を迎え、とにかく閉塞状態のレース業界だが、春には新しいストーリーや魅力が生まれていることを心から祈ろう。
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