Le Mans:新時代のスポーツカーレース
今年、WTCCと併催で岡山で年に1度きりのレースが開催された。「アジアン・ル・マンシリーズ」である。同シリーズはフランスで開催される耐久レース「ル・マン24時間レース」を頂点とした「ル・マンシリーズ」のアジア版で、このシリーズで優勝したチームには翌年の「ル・マン24時間レース」の出場が確約されるというのが最大の魅力だ。当初は富士スピードウェイと上海国際サーキットでの開催予定だったものが変更され、岡山の1戦のみで争われることになった。ややドタバタ感は否めないが、日本でなかなか見ることができなかった「ル・マン」のプロトタイプカーやGTマシンが多数来日したインパクトは非常に大きい。
今年のル・マン24時間レースで優勝を飾ったプジョーのプロト車両「908」 【写真提供:プジョージャポン】 |
さらにアメリカで開催されている「アメリカン・ル・マンシリーズ」ではホンダが「アキュラ」ブランドでプロトタイプカーで参戦している他、先日の「アジアン・ル・マン」にもSUPER GTでお馴染みのJLOCがランボルギーニを走らせたり、東海大学が学習の一環としてプロトタイプカーを走らせたりと日本とのつながりは少なからず存在する。
このレースには他にはない迫力があり、様々な車種が出ているという意味でも魅力が多い。特に年齢層が高くなってしまった日本のモータースポーツファンには受け入れやすく、面白みを感じる最適のカテゴリーではないだろうかと思う。また、日本の熱心なレースファンにはパパッと終わってしまうスプリントレースよりも耐久レースの方が感情移入しやすく、日本でヨーロッパ・アメリカ的なレースを楽しむ文化を根付かせるにはこれ以上ないカテゴリーではないかと考えている。
しかし、マニアばかりを相手にしていてはビジネスとして成り立たないので、若いファンにどう波及させるかもポイントである。そのためには日本の自動車メーカーの参戦も不可欠で、「トヨタ」「ニッサン」が果たせなかったル・マン制覇の夢に再チャレンジする姿勢を見せてくれればなお良いのであるが。。。
同シリーズを取り仕切るACO(フランス西部自動車部)としては今後の重要なマーケットとして、中国をあげている。アジア全体として考えれば、有力な自動車メーカーを持つ日本も無視できない部分であり、中国への足掛かりとして日本のメーカーにも積極的にアプローチしていくであろう。ヨーロッパで主流のディーゼルエンジンや日本のメーカーが積極的にすすめるハイブリッドシステムが「ル・マン」の戦場で争うとなれば、メーカーにとっても魅力的なものになるはずで、中国も視野に入れる同シリーズへの参加はかなり挑戦しがいのあるものと想像するのだが。とにかく今後の動きには注目していきたい。
90年代のル・マンといえばトヨタの挑戦である。悲願の優勝を狙っての再挑戦はあるのか?ドイツのF1チームは撤退後、何に挑戦していくのか? 【写真提供:トヨタ自動車】 |
このように世界には様々なレースカテゴリーがあり、レースが文化として根付いている地域では、不況になってもレースが自動車産業にとって必要なマーケティングツールであるとみなされている。しかし、ここ日本においては自動車メーカーが昔ほどレースに積極的ではなくなっており、レース以外の部分に目を向けている。今は限られたモータースポーツの予算をどこに割り振るかを検討する時であり、日本のメーカーがレースの世界で積極的に動き始めるのは2011年以降になると予想される。
日本のメーカーは自動車・バイクのモータースポーツへの関わりを絶ってしまうのか、それとも充分に吟味して新しいレースへの挑戦を行うのか、とりあえず2010年は「大人しく」見守った方がよさそうだ。
次回は国内レースについて現状の解説と将来への展望を紹介します。
【関連リンク】
Bridgestone Motorsport
↑F1全チームにタイヤを供給。サイトは情報が盛りだくさん
ホンダ・モータースポーツサイト
トヨタ モータースポーツサイト
【All About「モータースポーツ」】
All About モータースポーツ トップページ
All About「モータースポーツ」のメールマガジン好評配信中! 登録はコチラ