レクサス、日産、ホンダのワークス対決にアストンも参戦!
まずはエンジン出力が500馬力程度に設定された「GT500」クラスの見どころをご紹介しよう。GT500クラスは主にメーカーワークスの戦いの場として設定されたクラスで、国内3大メーカーが威信をかけて製作した究極のGTマシンが参戦する。昨シーズンは新たに参戦した「NISSAN GT-R」がSUPER GTを席巻した。GT-Rは開幕戦の鈴鹿GT300kmレースを驚異的なレーススピードで制すると、続く第2戦の岡山でもGT史上初となる2連勝を飾るというセンセーショナルなデビューを果たした。さらにシーズン中にはセパンサーキット(マレーシア)で横浜ゴムのタイヤを装着したKONDO RACINGのGT-Rが優勝を飾り、さらに鈴鹿1000kmではカルソニックIMPULのGT-Rが優勝、ツインリンクもてぎではハセミモータースポーツのGT-Rが優勝するなど、GT-Rの速さが際立った。2008年はまさにGT-Rのためにあった年と言ってもいいだろう。
開幕戦の舞台、鈴鹿を1-2体制で快走した日産ワークスチーム「NISMO」のNISSAN GT-R。エースマシンの23号車「ザナヴィニスモGT-R」をドライブした本山哲とブノア・トレルイエの最強コンビはシーズン3勝を飾り、ドライバーズチャンピオンに輝いた。 【写真提供:SUPER GT.net】 |
2008年のSUPER GTを席巻した「NISSAN GT-R」は2009年シーズンのGT500・新車両規定を一部先取りして製作されたマシンだった。その新・車両規定とはトヨタ、ホンダ、ニッサンの3メーカー合意の下に決定されたもので、GT-Rは08年の登場から僅か1年で新規定に移行しなくてはならないため、主にマシンの寸法など車体部分において新規定に合わせたマシンを走らせていた。
新規定で最も大きな変更点はGT-Rが手をつけなかったエンジンに関する規定で、3メーカー間で「GT500マシンはフォーミュラニッポンと共通の3.4リッターV8のレーシングエンジンを開発し、全車FR(フロントエンジン・リア駆動)に統一しましょう」という約束が交わされ規定に盛り込まれた。しかし、これは景気の先行きが不安視され、自動車の売り上げが急激に落ち込む前の話で、予定通りいけば(あくまで予想の粋を出ないが)将来的にはトヨタが次期スープラにあたるFRスポーツクーペ、ホンダがFRの次期NSXを投入し、GT-Rと共に高級スポーツカーをベース車両にした「3.4リッターV8マシン」対決の場になるはずだった。
ところがこの不況である。ニッサンはフォーミュラニッポンにも共用できる3.4リッターのエンジンの開発を早々と中止したという話だし、ホンダは暫定的に現行NSXをレギュレーションに合わせて無理やりFRにしたNSXを開発していたようだが、投入を見送った。さらにホンダはF1の撤退と共に次期NSXの開発まで中止してしまった。結局、様々な事情から3社の新車両規定の足並みは揃わず、新規定に準じたマシンは「レクサスSC430」のみになってしまった。
昨年の開幕戦、鈴鹿でのGT500スタートシーン。3メーカーのバトルこそがGT500の魅力だ。 【写真提供:SUPER GT.net】 |
経済の状況が厳しさを増すこの状況ではメーカーの撤退もあり得ない話ではなかった。しかし、規定に合わないマシンが参加するとはいえ、3メーカーは参戦を決定したのだ。これは各メーカーが「SUPER GT」GT500クラスでの対決を大切に思っている証拠であり、子供たちやファミリーなど新しいGTファンの増加も3メーカーの参戦を後押しする原動力になったのは間違いない。このように、2009年シーズンのGT500は当初の予定通りには運ばなかったが、最終的には3メーカーがマインドの上での足並みを揃えた。ヤルとなったら、後はコース上で昨年以上のガチンコバトルを見せてくれるはずだ。
その3メーカー対決の場に、なんと、イギリスの高級スポーツカー「アストンマーチン」急遽登場してくることになった。マシンは欧州の「ルマンシリーズ」などで活躍するアストンマーチンDB9Rで、メンテナンスはF1解説でもお馴染みの森脇基恭氏が所属する名門「ノバエンジニアリング」である。今年後半から始まる国際シリーズ「ルマンシリーズ・アジア選手権」への参戦を目論んでいると見られ、今後の動きが気になるマシンだ。GT300ではなく、あえてGT500クラスに参戦したことも興味深い。どんなレースをしてくれるのか楽しみだ。
→次のページでは国内3大メーカーのGT500マシンをチェックします。