鈴鹿サーキットで、注目のGTマシン「紫電」が初走行を行った。
クラブマンレース参加者が練習を行う、日曜日の4輪スポーツ走行枠に魚雷のような雰囲気のカーボンむき出しのマシンが突如現れ、周囲を驚かせた。
日本を代表するレーシングカーデザイナー、由良拓也氏が率いるムーンクラフトが製作した「紫電」。往年のレースファンにとっては懐かしいレーシングカーだ。名前の由来は第二次世界大戦中に日本軍で活躍した攻撃機「紫電」。戦時中はもちろん、戦後も子供たちにとって憧れの存在だった攻撃機「紫電」には、由良拓也氏もカッコイイという感情を抱いていたのだろう。由良氏はコンピューターで車をデザインする今とは違い、デザイナー(設計者)のセンス、経験と勘が速さを左右した時代にその手腕をいかんなく発揮した人物だ。レーシングカーとしての速さを追求すると同時に、車にカッコヨサと表情を盛り込んだデザインが由良氏の作品の特徴でもあった。そんな由良氏の代表作ともいえるレーシングカーが「紫電」である。
70年代に隆盛を極めた富士GCシリーズに登場した先代の「紫電」は車の全高を極端に低くした近未来的なデザインのレーシングカーだった。残念ながら、先代「紫電」はレースで優秀な結果を残す事はできなかったが、いかにも速そうでスーパースポーツカー然とした強烈なデザインは今も多くのレースファンの記憶に残っている。
さて、その復刻版として登場した新型「紫電」に先代の面影は無い。新型「紫電」はグループCカーを彷彿とさせる攻撃的な雰囲気を持っている。80年代のバブル経済期のレースを知るファンにとっては懐かしい記憶が蘇るデザインではないだろうか。