待望のウォッチ・コレクション〈タンブール〉を、パリでは2002年5月22日に、そして日本では7月22日に発表した《ルイ・ヴィトン》。時計はこれまでにもいくつか手がけてきていましたが、本格的なコレクションは、実はこれが初めてです。
コレクションの発表会場の入口は、なんと大きなトランクの形。特別製のゴーグルを着けてこの入口をくぐり、太鼓や時計が暗闇にフワフワと浮いている不思議な空間(ゴーグルのせいでこんなふうに見えるのです)を手探りで歩いていくと、やがてアフリカン・ドラムの乾いたリズムが聞こえてきて…。凝った演出で披露された〈タンブール〉は、シンプルですっきりとした、スポーティな時計でした。(画像は次ページにあります)
TAMBOUR(タンブール)とは、1540年にヨーロッパで初めて作られたドラム形ウォッチに由来した名前。厚みのあるステンレス・スティールのケースも、どこか太鼓に似たフォルムになっています。側面に刻まれているのは、ちょうど12文字ある "Louis Vuitton" のブランド・ネーム。裏蓋に刻印されたLVのモノグラムも、ファンにとってはたまらない隠れた魅力です。
今回のコレクションには、ルイ・ヴィトン・カップにちなんだ限定モデルも含まれています。世界最高峰のヨット・レース、アメリカズ・カップの挑戦艇を決めるのが、このルイ・ヴィトン・カップ。10月1日からオークランドで、6カ国9チームが出場して行われる今年のレースを記念して、〈ルイ・ヴィトン カップ 自動巻クロノグラフ キャリバーLV277〉が世界277個限定で発売されるのです。
報道関係者用資料によれば、「キャリバーLV277は、世界的に高い評価を受けているスイス製のムーヴメントで277種類の部品から組み立てられています。1969年に発表された世界最高速振動の自動巻クロノグラフ・ムーヴメントがベースとなっています」とのこと。メーカー名は伏せられていますが、これはもう、先頃モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH)グループ傘下に入った《ゼニス》の名作、エル・プリメロが入っているということになりますね。
さて、今回のコレクションを見て私が感じたのは、意外にもデザインがクリーンにまとまりすぎているように思えたこと。ルイ・ヴィトンのバッグが持つあの強烈なアイデンティティが、ちょっと薄まっているような気がするのです。もちろん、裏蓋にはモノグラムが刻まれているし、シースルー・バックになったキャリバーLV277のローターにも "LV" のデザインがしっかり入っています。でも、見えないところに凝るよりは、やはり見えるところに凝って欲しかった。ブランド・ネームもせっかく12文字あるのだから、ケース側面ではなくてダイアルに入れてくれた方がよかったのに…。
こう書くと、「そんなコテコテの時計、誰が着けるの?!」と言われてしまいそうですね。でも、こだわりのある良質でクールなスイス製ウォッチが数限りなく日本に入ってくる中で、あえてルイ・ヴィトンのウォッチを買う理由を探すとしたら、やはり「デザインのわかりやすさ」のひと言につきると思うのです。
ともあれ、〈タンブール〉は2002年9月1日オープンのルイ・ヴィトン表参道店で販売がスタートする予定。9月中には、全国7店舗のプレタポルテ取扱店にも並びます。それでは次ページで、いよいよその画像をご紹介しましょう。
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