白系・黒系に席巻された、2008年度グッドデザイン賞
松本:
大賞に選ばれたトヨタ自動車のiQ(アイキュー)に象徴されるように、2008年度グッドデザイン賞は、白系・黒系が多く色味は少ない印象でしたね。
秋元さん:
家電製品やエレクトロニクス機器では、全般にホワイトもしくはブラック基調の製品が多くなりました。日本のプロダクトの傾向としては、さまざまな色相にチャレンジするよりは、たとえば同じ黒であっても仕上げを変えることで変化を表現することがメインストリームなのだと思いますが、自動車も大型車が比較的多かったため彩度の低いカラーが目立ちましたが、話題の小型車であるトヨタiQが、「マイクロプレミアム」を謳ってあえて上級サルーンのようなダークトーンでの多色展開を行っていることは、小型車の戦略としてこれまでにない新規性を感じさせる試みといえます。
プレミアムカラー?ベーシックカラーの深化?
松本:日本では伝統的に、白は神の色であると同時に”喪”の色であり、喪服の色が黒であるように、黒は死者を送る色でした。1980年代、パリで作品を発表した川久保玲さんや山本耀司さんの黒あるいは白の無彩色が注目され、世界的な評価を受け、黒や白はファッションカラーとして、独自のパワーを持つようになりました。しかし、1980年代以降、黒はリクルートスーツの色として定着し、ファッションの領域では、どちらかといえばベーシックカラーという意味合いが強くなったように思います。プロダクトデザイン(あるいはマーケット)において、プレミアムカラーとなりうる黒、あるいは白の要件は何だとお考えになりますか?
秋元さん:
プロダクトデザインは、プラスチックや金属などの素材を最終的な立体物へまとめあげることで成り立っています。素材の加工特性や耐久性、安全性、コストなどを充分に考慮しながら、機能を満たすデザインであることが要求されますが、色彩もそうしたプロセスの中に位置づけられます。つまり、文化的な背景や意味合いから色を選ぶだけではなく、その色が素材とのマッチングに無理が無く、素材の持ち味を充分に引き立て、しかも製品の機能を果たす上で障害になっていないことなどを満たして、はじめてプロダクトデザインにおけるプレミアムカラーと呼ぶにふさわしいと考えています。
松本:
トヨタ自動車のiQのカラーバリエーションは、プレミアムカラーというより、ベーシックカラーの深化という見方もできるかもしれませんね。秋元さんのご意見はいかがですか?
秋元さん:
サイズや価格面などで、これまでの小型車を選択する基準や価値観とはまったく違う方向性を示しているiQは、ある意味で今日のユーザーに対して、人とクルマの関係そのものを見直させるような根本的な提案ではないでしょうか。そういった視点で見ると、そのカラーバリエーションにもベーシックな主張が込められていると言ってよいと思います。
松本:
日本のプロダクトで、特徴的なカラーデザインを、ご紹介いただけますか?
秋元さん:
携帯電話やステーショナリー類はカラーバリエーションを多く設定する傾向が定着しています。注目したいのはパナソニックのデジタルカメラ「ルミックス」の一眼レフタイプです。
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