自分の子を産まなくてはいけないか
育児に関わる選択肢は「子どもを産む」こと以外にも |
ニューヨーク大学にバーバラ・カッツ・ロスマン博士という社会学者がいますが、彼女は妊娠・出産に関する社会学の本を多く出版していることでも知られています。そのロスマン博士によると、その世界中の人たちに「どうして子どもを産むの?」と聞くと、アメリカ人は「楽しいから!」と答える方が多いそうです。一方、日本人や韓国人は、「一人前の社会人として……」とか「跡継ぎを生むことが大事だから」と答える人が目立ち、子どもを生み育てることに義務感を持っている人が多いそうです。
「立場上、産まなくちゃいけないんじゃないか……」。私はそんな理由だけで生む必要はないと思っています。「子どもは自分を一人前にするため、自分の立場を強くするために産む」というのでは、これから産まれてこようとしている「天のエンジェル」から見ると、そんなお母さんはちょっとこわいかもしれません。
さて、「子育ては楽しいことだからよ!」というアメリカ人女性も、実際は約25%の人が自分の子どもを出産してはいません。でもその25%の中には、自分で生まなくても養子を育てている人が数多くいます。アメリカでは年間5万組の家族がフォスターケアー(里親と里子さんのご縁)で誕生しています。日本でも、年間400組の親子が養子縁組で誕生しています。
血縁にこだわらない「家族」
アメリカのセレブリティの間でも増えている養子縁組 |
ブラッド・ピッドとアンジェリーナ・ジョリーの家族が、ベトナムやアフリカから養子を迎えていることは良く知られていますし、メグ・ライアンやシャロン・ストーン、マドンナなど、アメリカのセレブリティだけでも、人種や民族を超えた養子縁組が主流化しています。
日本の社会は、ほぼ単一民族で、髪の毛の色や目の色が違う人と同じ社会に暮らすことに、ようやく慣れてきたという感覚です。しかも、日本人の場合は、家制度や血筋といったことにこだわりがあります。ですから、肌の色が違う人たちと家族になれる欧米人の意識を理解するのは難しいですよね。特にアメリカ合衆国は、いろんな民族の人が共存しているので、血のつながらない子をわが子として育てることの抵抗感が少ないようです。
実際の子育ての現場をみても、日本は実の親が育児の担い手であるということがスタンダード。しかし欧米などでは、たとえば、フランスには乳母の制度があって、2~3歳になるまで乳母に預けていたり、アメリカの子育てをしている家庭には、常にベビーシッターが居ることに抵抗感はありません。そうした土壌の違いもあるようです。
日本にはどんな制度があるか
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類あります |
養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」のふたつがあります。普通養子縁組は、「家の存続」を目的としていることに対し、特別養子縁組は「子どもの福祉を重視」している制度です。国連こども権利条約では、3才までは、家庭で育つことが重要と養子縁組を推奨しています。恒久的に親である続ける養育の元で愛情形成できることがこどもの脳の発達にも有益という理由からです。
一方、里親の場合は養子と養親のように法律的な戸籍の親子関係はありませんが、養子縁組をする前に里親として養育し、様子をみるという方法もあります。また、東京都の「ほっとファミリー」のように、養子縁組を目的とせずに、家庭で暮らすことができない子どもを一定期間養育するという制度などもあります。まずは、児童相談所の里親登録をするなど専門機関に推奨して下さい。
さまざまな理由で、家庭で暮らすことのできない子ども達は日本にも数多くいます。一方で、まだ子どもを授かっていない、実子を育てているけれどほかの子どもも育てたいという思いを持っている方もいらっしゃる。そうした、里親や養子縁組の相談は、児童相談所やNPO法人などの団体が行っています。
高齢出産を考える年齢になった、成熟した大人だからこそ、「育児は実母だけの仕事ではない」という広い視野で、未来人を育てることに関わりを持ちたい方も多いのではないでしょうか。産みの母を英語ではバースマザー。育ての親は「セカンドマザー」ではなくライフマザー(生活の母、人生の母)と呼び名にしてもいいのかもしれません。「地球に生まれてきた子どもを育てたい」という思いをかなえるために、出産以外の選択肢もあることをお伝えしておきたいと思います。