カムバック! カミナリ親父たち
「子育てに関する夫婦の役割」を考えたとき、子どもが幼児期の場合は、授乳など身体の機能を使う母親が子育ての中心的役割として重要な立場にあることは確かでしょう。でも、子どもは夫婦二人がいたからこそ生まれた子ども。実際には育児の負担感は、母親の負担感が大きく、国立社会保障人口問題研究所が示す理想の人数の子どもを産まない理由の上位は、父親の育児参加が関係しています。第1位は経済的理由ですが2位は「これ以上の負担に耐えられそうにない」で、そして3位(同位が3つありますが)が悲しいかな「夫が育児に参加できそうにない」からです。それくらい、核家族では、夫の育児が妻の出産動機につながる時代。子どもたちは、困っている母親を助けている父親をみて、大人を信頼しながら成長していきます。
かつての日本にはカミナリ親父という人たちが町中にいました。いつでも一生懸命大声出して子どもに関わっているおじさん。特に思春期男児たちの悪い行動を、落雷のごとく怒鳴り飛ばしくれた地域の重鎮。昨今、カミナリ親父とおせっかいおばさんが減ってしまったのも、少子化の一因ではないでしょうか?
まさに今のこの時期、日本の父親力が試される
子どもの「いじめ問題」がニュースを騒がせていますがテレビでも様々な文化人やコメンテーターの方が父性欠如が問題という意見も出しています。「思春期における父親の役割の重要性」については様々な研究で明らかですが、思春期前まで何も関わらなかった父親が、急に子どもに関わろうとしても遅いのではないでしょうか? やはり乳幼児期からの父親の存在感は時間など量的存在感ではなく、質的存在感として必要なのでしょう。母親の手助けとともに、子どもの育ちの手助けとして、そして悪さをするようになってきたら「カミナリ親父」として秩序を教える。それまでは、産まれた瞬間から父親として関わっていくことが欠かせないと思います。そもそも、子どもが小さい頃は男性の役割が少ないと考えているのは日本くらいのもの、世界では稀なのです。父親が「未来の人」である子どもと顔を合わせないなんて、世界的にみれば異常。日本にはこれまでロールモデルがなかったと言えます。だからこそ、一昔前とは違った父親の役割を土台に
「新しい父性」というものを確立していくべき時期に来ていると思います。
母乳育児が中心となる生後~半年ほどまでは、子育てはやはり母親の存在抜きにして考えられませんが、生後7~8ヶ月ほどになれば父親に対する愛着行動、親和行動は母親に対するそれよりも若干低くても十分成立しています。幼児期の父親の存在は子供の成長、発達に重要な意味を持っているのです。幼児期から母親と同様かそれ以上の子供との関わりが、その後の子供の発達にとって大きな影響を持っているということです。また、育児で積極的に振る舞う父親の場合には、子どもは父親を同一視し、道徳心もより多く持ち合わせていたという調査もあります。
「子どもを見たら、誰の子でもとにかく喜ばせる」「悪いことをしていたらわが子じゃなくても真剣に叱る」という「みんなの子」思想が根付いていた地域ぐるみの育児では、実際の家族以外の大人たちも子どもにとって重要他者でした。カミナリ親父は、育児中の若い父親にとっても正義という見本を見せてくれた親父の中の親父だったのかもしれません。こんな不安定な時代こそ、いろいろと子どもを守り、助けるために、今までとは違った「子育てに関する父親の役割」が出現してきてもいいかと思います。まさに今のこの時期、日本の父親力が試されているのではないでしょうか?
これ以上、孤独な子どもたちが死を急がないように、大切な命たちが幼い者同士でいじめあい、傷つけあわないためにも親父の香りとぬくもりで、子どもたちをうんとあたたかく包んで欲しいです。
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