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分娩台は何のためにあるの?

フリースタイル出産は、分娩台で決まった姿勢をとらないでいい、自由なお産です。しかし、そもそもなぜ私たちは分娩台を使ってきたのでしょう?

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

そもそも分娩台の始まりは?


これまでお産は分娩台の上でするものでしたが、その常識を覆しつつあるのが自由な姿勢での出産――「フリースタイル出産」です。「アクティブ・バース」とも言われます。

このお産の良さはたくさんありますが、それをお話しする前に、ちょっと考えてみてください。なぜ、これまでのお産では、分娩台の上で寝ていたのでしょう?

あお向けの姿勢の始まり


あお向けに寝るお産は、ヨーロッパで、16世紀に普及し始めました。その時代、「鉗子」という、産道の中にある赤ちゃんの頭を挿んで引っ張り出すサラダ・サーバー状の道具が大評判となりました。今まで命をあきらめていたような難産でも救ってくれたからです。ただ、それを使うには、女性が所定の姿勢をとる必要がありました。フランスの王室が寝て産むようになったことも、定着への推進力になったようです。

手術がしやすい台


この時代以降、鉗子の他にも、麻酔、切開などたくさんの技術が発明され、盛んになりました。難産ではない普通のお産を素早く終わらせるためにも使われるようになり、お産は手術にどんどん近づきました。やがてベッドも、手術台のような台に発展しました。「分娩台+寝る」というスタイルには、こんな歴史があります。

昔のお産


分娩台が登場する前は、お産はいすに座ったり、しゃがんだり、立ったりしておこなわれていました。その方が、赤ちゃんの下がる方向が引力と同じ方向になって産みやすかったのです。寝てしまうと、産道は上り坂になってしまうのです。エジプトにも、クレオパトラがひざをついてすわった格好で出産している絵が残っています。

日本でも、昔はすわって出産していましたが、やがて家庭の布団に仰向けで寝るようになり、病院出産の時代になると分娩台のお産になりました。

分娩台は全員に必要なものではない


分娩台は、医療処置のための台です。医療処置は大事なことでしょうが、本来誰にでも必要なものではありません。まずは産みやすいようにやってみて、何か医療が必要になったらその時に分娩台へ行くのでもよいのでは?――そう考える医療者が静かに増えてきて、日本でもフリースタイル出産が各地に登場しています。
写真の上は分娩台、下は産婦人科の手術台。足を載せる台が似ていますね。



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