経営術その5 他の商売に手を出すな
ガイド:ずばり、商売をうまくいかせるコツは?田中修治氏(以下 田中):結局、真面目に一生懸命やっていれば、商売はうまくいくんだと思いますね。
ガイド:「真面目に」というのは?
社長の田中修治さん。
やっぱり、二足のわらじは難しいと思います。やるのであれば、圧倒的な大企業になってからでしょうね。本業だけ一生懸命やればいいけど、ある程度会社が大きくなるとどうしても別の商売に手を出したくなってしまう人が多いんです。
でもね、仮に月の収入が1000万円あったとして、例えば毎日高級料亭で食事をしても、なかなか簡単に使いきれないけれど、商売に投資をしたら一瞬でなくなることもよくあるわけです。だったら、余計な投資はせずに毎日おいしいご飯を食べていたほうが、金銭的リスクは圧倒的に少ないんですけど、人間は飽きる生き物だから、どうしても違うことに目がいってしまう。しかも商売人は商売に目がいくんです。そこで簡単に手を出してしまって、結局ダメになってお金もなくしてしまうんですよ。
ガイド:それが商売人のサガ?
田中:本来であれば、今の自分の商売や、うまくいっている主力事業にお金を使えばもっと大きくできるんでしょうけど、つい違うものに興味を持ってしまう。しかも、今の商売を始めたとき、あんなに苦労したことも忘れて。今の成功は過去の苦労があってこそなんだから、何か新しく始めるということは、またあの苦労があるはずなんだけど、それをすっかり忘れてしまうんですね。それで簡単にうまくいくような気がして、ついついはじめてしまう。だから、僕はもう、いつも「他に何もやらないようにしよう」って思ってますね。毎日葛藤ですけど(苦笑)。
経営術その6 自分のことは一番最後
田中:社員の給料やお客さんの満足度よりも、自分のことを先に考えてしまう、つまり私腹を肥やすことを優先してしまうと、会社は傾いてくるような気がします。たとえば、遅刻もしないし休日もなくすごく頑張っているから、会社の利益に見合わないくらい多額の給料をもらってもいいというのは、僕としてはちょっと違うなって思うんです。社員は社長のことを見てないようで、ちゃんと見ているものなんだと思います。だから、「この社長は自分のためだけに経営をしてるんだな」っていうのは、すぐに見抜かれます。そうすると、社員はついてこなくなります。
ガイド:順番を考えると?
田中:順番としては「お客さん」→「従業員」→「自分」が本来の経営のスタイルなんだと僕は思うんです。社長は最後にあまった分をもらえればいいという感覚で、今は少ないけど、会社が大きくなっていって全体量が増えれば自分の分も増えるよなって考えでいれば、それは従業員にもちゃんと伝わります。そうすれば、みんなついてきますよ。
逆にいえば、みんながついてくるだけの原資がないのであれば、自分は給料を取らなければいいんです。社員の給料が上がっていかないのに、社長の給料が上がっていったら、社員は楽しく働けないでしょう。そうしたら、会社はうまくいきません。
だから社長の仕事は、従業員に幸せを与えて、お客さんに満足してもらうサービスを提供することなんです。