「子ども手当て」導入が家計に与える影響
世帯類型・年収によって違う、「子ども手当て」の家計への影響…… |
「子ども手当て」の導入で、あなたの家計は得をしますか? 損をしますか?
■専業主婦世帯の一部で手取り減少
まずは、専業主婦の世帯(夫の扶養の範囲内で働く妻の世帯を含む)について見ていきましょう。
専業主婦の世帯で、子どもがいない世帯の場合は、手取り額が減少することになります。これは、配偶者控除廃止による増税の影響によるものです。これから子どもを産むことを計画して、貯蓄などをしている世帯にとって、手取り額減少は痛いです。
子どもが1人の世帯では、子どもが高校生又は大学生の場合は、手取り額が減少することになります。これは、「子ども手当て」の恩恵が受けられず、配偶者控除廃止による増税の影響によるものです。子どもの扶養は、特定扶養控除の適用が改正前の後も受けられます。子どもが高校生の場合は、授業料免除(又は助成)を考慮すると手取りは増加しませんが、一番お金のかかる大学生の時に手取り額が減少するのは痛いです。
※社会保険料は年収の12.77%、生命保険料控除は、一般と年金を合わせ10万円で試算 ※公立高校授業料無償化による影響は加味していない ※支給条件等、制度内容について未確定な部分もあるので、導入時の実際の数値と 異なる可能性がある |
子ども2人の世帯の場合、子どもが大学生2人(高校生でも同じ)の世帯で手取り額が減少するという結果でした。
※「大学2人」は、「高校生2人」・「高校生・大学生」の場合でも同じ |
■共働き世帯、DINKSは影響を受けない
次に共働きの世帯(配偶者控除及び配偶者特別控除の範囲を超えて夫婦2人が働いている世帯)について見ていきましょう。この場合の年収は、世帯年収ではなく、夫婦のうち年収の高い方を参照してください。
共働き世帯で子どもがいない(DINKS世帯)場合は、「子ども手当て」導入による家計への影響はありません。子ども1人世帯の場合は、配偶者控除廃止による増税の影響を受けないため、専業主婦世帯に比べると、「子ども手当て」導入による恩恵は大きくなっています。
※「大学2人」は、「高校生2人」「高校生・大学生」の場合でも同じ |
■低所得世帯と高所得世帯の恩恵は大きいが、中所得層の恩恵は小さい
一般的に配偶者控除や扶養控除などの所得控除を廃止して、手当てを給付する方法を採用した方が、より低所得者層に恩恵が与えられると言われています。そこで、年収別に「子ども手当て」導入の家計への影響を見てみると、確かに低所得層(ここでは300万円と仮定)の年間手取りの増加額は大きくなっています。
ところが、中所得層(ここでは500万円・600万円)になると年間手取り額は減っていき、高所得層(ここでは1000万円・1500万円)になると年間手取り額が増加する傾向にあります。特に年収1000万円の世帯は年収300万円の世帯よりも同じ世帯構成で手取り額が増加するという逆転現象が起こる場合もあります。これは、年収1000万円の世帯は児童手当廃止の影響を受けず(もともと支給対象外)、所得制限のない「子ども手当て」の恩恵をそのまま受けられるためです。
世帯数の多い中所得層が受けられる恩恵が高所得層よりも少ないという皮肉な試算結果となりました。特に子どもを産んで育てるという世帯形成層の多くは中所得層なので、少子化対策ということであれば、中所得層への恩恵を厚くすることが望まれます。