熱中症は「不慮の事故」と認められない!?
夏でも冬でも、一年を通して熱中症にかかる危険はあります。ふと、熱中症で入院・死亡したら、病気と災害のどちらの保険金が支払われるのか疑問を感じ、調べてみました。保険の世界では、災害と認めるのは「不慮の事故、または、所定の感染症を直接の原因」とする場合です。熱中症は感染症ではないので、熱中症が災害と認められるかどうかは、「不慮の事故」とみなせるかがポイントになります。
不慮の事故とは、「急激」かつ「偶発的」な「外来」の事故という3つの要件を満たすもの、とする保険会社が一般的です。
3つの要件の具体的な定義は次の通りです。
●急激
自動車事故や物が落ちてくる、土砂に押し流されるなど突発的な出来事であること。
●偶発的
本人が予期し得ない偶然な出来事であること。
●外来
身体へ外部から力が加わること。
そして、熱中症は3つの要件を満たさないので、災害で保険金は支払われないことになります。ただし、かなり特殊な事例ですが、災害と認めた判例があります。その事例は、「工事中の熱射病による死亡で、過度の高温が気象条件のみならず、作業場の鉄板による反射熱が気象条件に相乗した結果として熱射病になった」としたものです。
熱中症による入院・死亡は、「災害」では保険金が支払われないとなると、「病気」で支払われることになります。「支払われるなら、どちらでもいいじゃない」と言われそうですが、実は、どちらで支払われるかで、ちょっとした違いが出てくるのです。
入院した場合の給付金額は同じだけれど……
熱中症による入院・死亡は、「病気」として保険金が支払われることになります。では、「災害」で支払われるのと「病気」で支払われるのとでは、どんな違いがあるのでしょうか。医療保険や医療特約の説明書きを読むと、給付金について、「疾病入院給付金」と「災害入院給付金」と分けて記載されています。病気で入院したときは「疾病入院」から、災害で入院したときは「災害入院」から給付金を支払うという意味です。
熱中症が災害・病気どちらでも、支払われる入院給付金額は同じです。では、どこが違ってくるのか。それは、通算限度日数が「病気」と「災害」のどちらでカウントされるかです。
通算限度日数とは、入院した日数を通算していき、この日数に達したら、その後の入院については給付金を支払いませんという制限のことです。
通算限度日数は商品によって異なり、1000日・1095日などで、「病気」と「災害」それぞれで通算されます。通算限度日数を使い切るまで入院することは稀なので、どちらでカウントされても、どうでもいいといえばいえますが……。
災害死亡の特約保険金は支払われない
死亡保障の保険の特約に、災害割増特約と傷害特約があります。災害割増特約は文字通り、災害で死亡したときは主契約の保険金に割増の保険金が加算される特約。傷害特約は、災害で死亡したときは主契約の保険金に割増の保険金が加算され、障害が残った場合は障害等級に応じた障害給付金が支払われるという特約です。すでに述べたように、熱中症は災害ではありません。そのため、上記の特約を付けていても、熱中症が原因で死亡した場合は災害死亡の特約保険金は支払われません。もちろん、主契約の死亡保険金は支払われます。