先日、東京・自由が丘にある民家を利用したカフェ「古桑庵」で、現代住宅でも応用可能な民家の知恵や工夫を紹介するセミナーが行われました。講師は、 東京都市大学 都市生活学部教授の坊垣和明(ぼうがきかずあき)さん。今回のセミナーでは、多くのスライドとともに、民家にみられる知恵の一端を紹介してくださいました。

民家にみられる工夫も参考に

落ち着いた和室でのセミナー。寺子屋のような雰囲気も心地よい

落ち着いた和室でのセミナー。寺子屋のような雰囲気も心地よい

できる限り環境にやさしい暮らしをしたいと思っていても、厳しい暑さが続く毎日に、エアコンに頼らざるを得ないという方も多いでしょう。とはいえ、地球規模での異常気象がみられ、環境問題に関して意識を高めなければならない今、住まいづくりはもとより、普段の暮らしの中でも、省エネルギーに配慮することが必要になってきています。

現代のように冷暖房空調設備が整っていなかった時代に戻れば、エネルギー消費は減らすことができると言われていますが、現実的ではないでしょう。しかし、当時の暮らしの中で、快適な毎日を送るための工夫や知恵は、現代の生活や家づくりにおいても参考になることも多く、生かすこともできるのではないか、と坊垣さんは話されます。

環境に合わせて光や風を調整し利用する

豊かな光を取り込む木製の窓もすがすがしい

豊かな光を取り込む木製の窓もすがすがしい

例えば、暑さをしのぐ工夫として、日本各地にみられるのが日射しを遮る並木や植栽のある暮らし。地域ごとの自然環境に合わせた形が工夫されており、日射遮蔽だけでなく、防風林や屋敷林、視線を遮る役割もあるとか。

また、風を取り入れることも重要なポイント。ふすまや障子を取り払えば風が通り抜ける開放的な民家のつくりは、理想的なプランにも感じました。葦戸や格子を用いるなど、季節や状況に合わせて設えを変えることは現代では難しいかもしれませんが、簾や可動間仕切り扉など、取り入れることができる工夫もあるのではないでしょうか。

暮らしに必要な光を取り入れる工夫としては、民家でも高窓や天窓は多く用いられたとか。窓が取りにくい場合は、坪庭を設けることで光を呼び込む工夫がされていたと言います。現代でも、近隣環境や敷地条件によっては同様の工夫が有効でしょう。

自由が丘駅から徒歩5分の「古桑庵」。すだれが緩やかに光を遮る空間でゆったりと

自由が丘駅から徒歩5分の「古桑庵」。すだれが緩やかに光を遮る空間でゆったりと

静かな佇まいの民家の中でのお話は、自然の摂理にかなった先人たち知恵に改めて驚きを覚えるとともに、今の暮らしの中でも意識を持ち工夫することで、エネルギーに頼りすぎず、快適さを引き出すことも可能であることを確認することができました。


セミナー会場となった「古桑庵」は、大正時代に建てられ、築85年の民家を利用したカフェ。静かな佇まいとお店の方々の心のこもったおもてなしにも、古きよき風情も感じ、幸せな時を過ごすことができました。

【関連情報】
トステム
古桑庵(こそうあん)

※今回のお話の内容は、坊垣さんの著書「民家のしくみ」(学芸出版社)に、多くの民家の写真とともに詳しく書かれています。


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