名づけでは法律で決められたルールは少なく、あまり気にする必要もありません。それよりもなぜ法律で決められたルールがあるのかということ、また法律で決めていない道義的なことのほうが重要です。
法律で決められたルールはわずか
法律で決められた名づけのルールは少ない
名づけにはどんなルールがあるのか教えてください、というご質問もよくありますが、名前に関して法律で決められていることはわずかです。
まず名前に使える文字の範囲が決められています(戸籍法施行規則第60条)。これは漢字で2930字体、そしてひらがな、カタカナで、私たちが日常使う字はほとんど使えますから、あまり気にすることではありません。
また名前を変更する手続きについては決められています(戸籍法第107条の2)。これも正当事由(社会的な理由)がなければならず、ほとんどの人には正当事由がありませんから、名前の変更はできないことになります。
また出生後14日以内に出生届を出すことが義務づけられており(戸籍法第49条)、出生届にはお子さんの名前を書く欄がありますから、名前も原則として14日以内に決めたほうがよい、ということにはなります。これもほとんどの人は決めています。
大事なのは、法律がある理由
このように法律そのものはあまり意識しなくてもよいのですが、なぜそういう法律があるのか、ということは非常に大切なことです。それは、名前というのは個人の持ち物ではないということです。「私の物だ、勝手に呼ぶな、書くな」とは言えませんし、気に入らないからといって捨てたり、変えたりもできません。なぜでしょうか?
個人がある日「今日から私はこの名前だ」と思ったことをそのまま認めたら、どの人がどんな名前なのか、本人にしかわからなくなり、名前をもつ意味はなくなってしまいます。契約書や領収書の署名も、学校の名簿も、病院のカルテも一切意味をなさなくなり、犯罪天国になって社会が崩壊します。
私たちの名前というのは、個人を特定し、社会を維持するためのものであり、国が管理する社会の共有物だということです。それを個人の持ち物のように思うのは、社会制度を真っ向から否定する発想になるのです。
道義的なルールを忘れてはならない
名づけに際しては、法律上の決まりのほかに、やはり道義的なルールというものも大切でしょう。
たとえば名づけのときに、他人から「字画を合わせなさい」と口を出されるケースは多いですが、名づけの際に占いに従うかどうかは個人の自由です。他人に占いを強要する権利など誰にもありません。
また「名前の読み方は親が自由に決めていいんだ」などと言って歩く人もいます。たしかに「名前の読み方を正しくしなさい」などとわざわざ法律で決めてはおらず、ふりがなをチェックしない役所も多いのは事実ですが、それを鬼の首をとったように、「だからどう読ませてもいいんだ」と言って間違った読み方の名前をつけたりしたら、まさに落第名づけです。法律で決められなければ、正しい読み方の名前がつけられないというのでは、親として、社会人として、あまりに悲しい姿です。
漢字は決まった読み方があるからこそ文字として機能するので、個人が勝手に読み方を決めるものではありません。間違った読み方の名前を「こう読ませる」などと他人に強要する権利など誰にもないはずです。
※画像提供 子供や赤ちゃんのイラストわんパグ