私にだって夢や希望がある。
それらを我慢して、本当に幸せな人生?

夫婦崩壊
心の拠り所を失った瞬間、夫婦の崩壊が始まった
「息子の小学校入学、それは私にとっても大転換期になると思っていました」。

そう語る奥さんは、以前から働きたいという願望を持っていたといいます。結婚後まもなく夫の転勤があり、妊娠・出産、そして2度目の転勤という事情もあり、今でこそ専業主婦として暮らしている奥さんですが、かねてから社会復帰の希望はAさんにも話していました。奥さんが短大を卒業して社会へ飛び出した当時はいわゆる「就職氷河期」。不況による厳しい就職活動を強いられた時代だっただけに、「働きたい」という気持ちが人一倍強い世代でもあります。

「夫の上司から、次の転勤は数年先になるだろうと聞いていました。息子が小学校へ上がることもあり、私は密かに就職先を探していました」。奥さんの社会復帰は経済的な理由からではなく、自分自身のこれからの人生を考えたときに、社会的な繋がりや、もっと広い視野を得たいとの思いからでした。「でも、夫はやはり私の話を聞こうとはしません。私にとってはとても大切なことなのに……」。

そしてもう一つ、奥さんを悩ませる問題がありました。それは、Aさんの両親のこと。Aさんの両親は今年還暦を迎える団塊の世代で、今までは兼業農家として生計を立ててきました。将来的な生活の不安などを奥さんに相談することも多くなり、長男の嫁としての重圧が、奥さんをさらに追い詰めていたのです。

「私は常に板ばさみの状態で、そのことを考えると逃げ出したくなるほど不安でした。本来は、夫が中心となって考えていかなければならないことなのに、ここでも夫は問題を先送りするばかりです」。

このように精神的に過度に追い込まれた生活が続いたある日、奥さんは心の中で張り詰めていた一本の糸が切れたように、夫との決別を意識し始めたといいます。自分の悩みや苦しみを理解せず、また、気づいていたとしても何ら具体的な行動を起こそうとしない夫との生活の中に、もはや「幸せな家庭」を見出せなくなってしまったのです。

「今、私がこんなに苦しいのは、誰のせいなのでしょうか?これ以上は悩みたくもないし苦しみたくもない。苦しいときに支えあえない夫婦なんて、はたして夫婦と呼べるのでしょうか?私にだって夢や希望があります。それらを我慢して一人で頑張って、歳をとって、本当に幸せな人生だったと言えるでしょうか?」

目を真っ赤に腫らし、一気に心情を吐き出した奥さんの胸には、一つの決断がありました。この夫婦は、これから何処へ向かおうとしているのでしょうか……?