男の子育て/夫婦のコミュニケーション

子育て世代に迫る熟年前離婚(2ページ目)

家庭を顧みない夫に失望し、離婚・自立へと歩き始める30~40代の妻が増えている。夫婦はいつ、どうして壊れてしまったのか?団塊ジュニアとも呼ばれる子育て世代に忍び寄る「熟年前離婚」の危機に迫ります。

執筆者:遠藤 雅大

突然の夫婦崩壊。
夫は「妻は全て理解してくれている」と思っていた

夫婦崩壊
仕事に忙殺される日々の中で、夫婦の会話は少なくなるばかりだったという
一見すると恵まれた環境にあるように思える夫婦が今、崩壊の危機にある。その理由はいったい何処にあったのでしょうか?Aさんは冒頭で「気付いたときには、大変なことになっていた」と話しています。つまり、夫婦の崩壊は突然に始まったと考えているようですが、果たして本当にそうなのでしょうか?

はっきりとした理由はわからないと前置きしながらも、Aさんはこう考えています。「考えられるのは、とにかく仕事が忙しくて夫婦で話しをする時間が不足していたということです。また、仕事だけに熱中しすぎた結果なのかもしれません。家庭での時間が少ないことは自分でも気がかりでしたが、妻は全て理解してくれているとばかり思っていました」。

技術者としての責任は大きく、専門的な仕事以外にも会議や打ち合わせ、膨大な書類作成に忙殺される毎日が続き、工期が近づけば会社に寝泊りすることも増えるといいます。

「私たち技術者は、家庭との両立が最も難しい職業の一つです。妻には以前から話し合う時間を作って欲しいと頼まれていましたが、実際には仕事が忙しくてどうすることもできませんでした」。Aさんとしては、「自分にも反省すべきところはあるが、Aさんの仕事に対する妻の理解不足も一因である」との思いがあるようです。

そんなAさんの言い分はわからなくもないのですが、ここまで事態が深刻化している原因はやはり夫婦の会話不足、「妻はすべて理解してくれているとばかり思っていた」という言葉からもわかるとおり、話さずとも相互理解はできていると過信していた結果だったのではないでしょうか?実際に奥さんに話を伺ってみると、夫にとっては突然だった夫婦の崩壊も、妻にしてみれば長い間苦しみぬいた結果だったことがわかります。

突然の夫婦崩壊 妻はずっと孤独だった

夫婦崩壊
夫にとっては、家庭より仕事が大切。それで本当に幸せなのだろうか……?
「夫は努力家で仕事熱心。社内外からの評価も高く、そんな夫ばかりを責めることはできませんが、私には以前のように接することができません」。そう話す奥さんの表情には、その心情の複雑さが現れていました。夫婦関係が拗れ始めた2005年当時、奥さんは3つの不安を抱えていたといいます。一つは、来春に小学校へ入学する息子のこと……。

「夫は仕事が忙しく、育児や家事を手伝ってくれることはありませんでした。当時の私は、それは仕方のないことだと言い聞かせ、『良妻賢母』を目指して頑張っていました……」。

しかし、間もなく小学校へ入学する息子のことを考えると、あまりにも父子の関係が薄すぎる。「夫にはせめてもう少し、家庭での時間を大切にして欲しい」。そう考えた奥さんは、入学準備に追われながらも、Aさんにそのことを相談しましたが、残念なことに、Aさんの反応は極めて無関心だったといいます。

「小学校入学といえば、私にとっては子育ての大きな節目。その喜びや感動を、夫と共に分かち合いたかった。それは間違いなのでしょうか?それなのに、夫にとっては仕事の方が大切で、私の話を真剣に聞いてくれることなどありませんでした」。

これをきっかけに、奥さんは「夫は家庭よりも仕事の方が大切。相談などしなければよかった」と急速に夫への愛情を失っていったといいます。

「妻は全て理解してくれているとばかり思っていた」。そう信じて仕事に没頭していたAさんは、ここで奥さんからの大きなサインを見逃してしまったともいえます。

しかし問題はさらに複雑で、奥さんは当時、それ以外にも大きな悩みを抱えていました。その悩みを誰にも打ち明けられない孤独感から、次第にAさんへの反発を強めていくようになったといいます。誰にも相談できずに苦しんでいた奥さんの悩みとは、どのようなものだったのでしょうか?
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