今読むと、意外に難しい『ズッコケ』シリーズ
那須さんの住む街は、緑がまぶしい三人組の原風景 |
那須さん:僕はね、視線を下げていないんです。子どもだからといって、手加減は一切しない。難しい漢字があったからといって、子どもは読まなくなるということはないですね。流れで読んでますから。事実、『ズッコケ心霊学入門』には、ポルターガイスト現象の難しい理論を入れてますし。僕はね、小学校のとき体が弱くてよく学校を休んで、NHKラジオ「私の本棚」っていう番組をよく聴いていたんです。そこでね、ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』の朗読を聴いたんです。理解できましたよ。「なんて美しい情景なんだ!」と子ども心に思いましたよ。わからない言葉があるからって、理解できてないわけじゃないんです。俗っぽい言い方をして悪いんだけど、子どもは馬鹿じゃなんです。そんなね、無菌状態で育てたって仕方ないんです。さすがにベットシーンまでは書かなかったけど(笑)。
思うに、『ズッコケ』シリーズが子どもに受け入れられた点は、「お子さまランチ」を出さなかったからだと思うんです。子どもだって、大人が食べているおいしいものを欲しているんだと思うんですよ。
『ズッコケ』シリーズ、終幕のワケ
ガイド:『ズッコケ』シリーズを、全50作で終わりにしようと思った理由は何だったのでしょうか?那須さん:坂井(現ポプラ社社長)さんからは「60作までやろう」と言われていたんですけど、今の子どもとの乖離があるんですよ。僕が35歳から『ズッコケ』シリーズははじまったんですけど、もう60歳も過ぎ、今見る小学生と昔見ていた小学生は違うんです。最初は我が子のような3人が、もう孫ですからね、年齢的に。50歳離れてしまうと、自分の中でイメージが作れなくなってしまうんです。いくら3人が歳をとらないといっても、現実的には自分は歳を重ねるわけだし。あとね、惜しまれてやめるくらいがちょうどいいかなって(笑)。
しかし、よく50作も続いたと思います。これは、読者の皆さんに愛され、読まれ続けたということで、ただ読者の皆さんに感謝しています。