ケース3:主夫のち社会復帰を目指す
現代はさまざまなライフスタイルを紋切り型に提供し、異端をあまり認めない |
「体調を崩す以前は、深夜残業や休日出勤が続く長時間労働の毎日で、家族との時間が作れないことが悩みの一つでした。家族をつくることに懸命な妻とのいさかいも絶えず、精神状態は常に仕事と家庭の板ばさみだったように思います」
家族のために働くという使命感と、仕事と私生活との両立に悩む日々の後、鈴木さんは体調を崩し自宅療養を余儀なくされる。そして、仕事に追われていた日々とは180度違う生活が始まった。それまで仕事に夢中だった鈴木さんは家事・育児に奮闘する主夫生活の中で、これまでの人生を振り返りながら様々なことに気付いていく。
「自宅療養を続ける日々の中で、私は自分の生き方、そして大切な家族と十分に向き合うことができました。以前の私は豊かさの本質を取り違えていたように思います。私たち家族は、今この瞬間の積み重ねでできているのだと気付きました」
それ以前の鈴木さんには、家事や育児について「やってあげる。手伝ってあげる」という思いがあり、家族サービスとして捉えていたところがあったという。
「たまの休みに少しばかり家事をしたり子どもたちと遊ぶだけで、何かをやっていた気になっていました。家庭のことは妻に任せきりで、どこかで逃げていたのだと思います。主夫的生活の中で、仕事をしていようがいまいが、子育てや家事は当たり前のことだと考えるようになりました」
体調が回復した鈴木さんは先月、休職前の職場に「契約社員」として復職する決意を固める。仕事と同様に家族や地域の一員として過ごす時間を大切にできるよう、労働時間を短くした雇用契約によって「ワーク・ライフバランス」の実現を目指し、新たなスタートを切ったのだ。今までの職場に雇用形態を変えて復帰するのだから、それぞれに難しい問題もあっただろう。それでも鈴木さんは、自らの望むライフスタイルを実現したかったと語る。これだけの決意を胸に交渉を続けた鈴木さんを、会社も職場の仲間も温かく迎えてくれたとのこと。
鈴木さんは今後、「仕事も家族も大切にできるビジネスマン」としての一流を目指すという。
今回の取材を通して、今の世の中、ライフスタイルまでもがカテゴライズされているような気がした。男だから、ビジネスマンだからといって、生き方までも型にはめなくてはならないのだろうか。
「自分らしく生きたい!専業主夫だっていいじゃないか!」
彼らはこれまでの自分の人生と向き合い、新しいライフスタイルを見つけた先駆者なのかもしれない。
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