平成15年7月1日から同年12月末日までの児童虐待による死亡という最悪の結果に到ったのは、厚生労働省が把握している事例では、24件(25人死亡)でした。(平成12年11月20日から平成15年12月31日まででは虐待死亡事例は149件)
私たちの力で、未然に防げたかもしれません。この痛ましい現実から目をそむけることなく、現実を受け止めたいと思います。そこで、24件の死亡事例の検証結果を紹介します。
児童虐待による死亡事例の特徴
○ 虐待を受けた子どもの年齢構成は、0歳児が44.0%、次いで2歳児が20.0%、1歳児が12.0%であり、全て6歳以下の就学前児童でした。さらに、0歳児のうち月齢4か月以下児が81.8%でした。
○ 虐待者の続柄は、実母が50.1%、次いで実父が30.0%、内縁関係にある者及び交際相手が13.3%でした。
○ 虐待者の年齢構成は、20代が56.6%、30代が26.7%でした。
死亡事例によく見られる共通の要素
(1) 乳幼児に対する虐待
死亡した子どもの全てが就学前の乳幼児であり、そのうち0歳児が11人(44.0%)を占めている。死亡原因のうちで最も多かったのが、頭部や顔面への暴力によるものであり、全体の42%に当たる10事例。
特に、乳幼児の頭部や顔面の外傷は、抵抗力の弱さを考えると、常に命に関わる危険な虐待であることを認識しておく必要があります。
(2) 親の精神疾患
24事例中、親に精神疾患があると報告された事例は4事例(16.7%)。親の精神疾患に援助者の注意が集まってしまい、虐待の認識までは至らなかったことから、子どもに対する対応が不十分な事例もあったということです。
(3) 養育環境及び養育者の状況
24事例について養育環境に見られる要支援要素は、「地域からの孤立」が54%、次いで「ひとり親家庭・未婚」が50%、「転居して間もない」が33%、「経済不安(失業・無職)」が33%であり、養育支援を必要とする要素を抱えた家庭が多くありました。
(4) 子どもが泣きやまない状況
虐待死に至る暴力を喚起した要素として「子どもが泣きやまない」ことが引き金になった事例が7事例(29.2%)。