低下する現場の学力
ある私大の入試担当者によれば、他大学に流れる前に出来るだけ早く定員の何%かを推薦やAO入試で確保したいという思惑があるという。というのも、国は募集定員に達しない私大の補助金を削減する方針を決めており、学生獲得は死活問題なのだ(募集定員を大幅に超えても削減される)。ただ、多くの学生を確保するために行われるようになったAO・推薦入試は、生徒の学力低下という問題も生み出しているようである。
早稲田大の白井克彦前総長は創立125周年の挨拶で「教育の早稲田」を目指すことを宣言している。具体的には以下のようなことだ。
- すべての教職員がそれぞれ10人の学生をサポート
- 徹底した基礎学力の養成
- すべての学生がTOEFL550点以上に
天下の早稲田大ですら、このようなことを標榜しなければならない時代に来たのだと感慨深い。いま現場の学生の学力低下は著しいものがあり、意思疎通ができない学生が増えていることを痛感している。
大学の中には学部から入試で入ってくる生徒とは別に、AO入試の合格者を対象に英語の通信添削や学科ごとのリポート提出など「宿題」を課しているところもある。入学式が始まる以前に、学力を一定レベルまで引き上げておくように対処しているのだ。
このように細かな対処ができている場合はよいが、そのまま授業が行われるとついていけない場合が多く、大学側も苦慮している例が多いと聞いている。大学は量だけを考慮せず、質の向上も考慮しなければならない時代に来ているのは明白である。