文章:石津 史子(All About「年金」旧ガイド)
65歳以降の厚生年金繰下げ制度って何?
過去に1ヵ月でも厚生年金に加入していた期間があれば、65歳から「老齢厚生年金」を受け取ることができます。
この65歳は、老齢厚生年金の本来の受け取り開始年齢です。
しかし、すべての人の年金受取適齢期=65歳ではありません。
病弱のために、働いて収入を得ることができない場合は、「減額になっても、65歳前から年金を受け取りたい」と思うでしょうし、65歳になっても現役でバリバリ働いている場合は、「年金は、まだ要らない」と思うかもしれません。
このように、年金を利用して個々人が自分のセカンドライフをより快適に過ごせるようにするために、60歳以降の希望する時点から年金を受け取れる繰り上げ制度のほか、2007年4月から65歳1ヵ月70歳0ヵ月までの間の本人が希望する時点から年金を受け取れる「厚生年金の繰り下げ制度」が導入されることになりました。
ただし、まだ加算額の算定方法などの具体的な内容が決まったわけではありませんが、現行の老齢基礎年金の繰り下げ制度と同様のしくみになると予想されています。
国民年金の繰り上げ・繰り下げ制度
国民年金から支給される老齢基礎年金には、従来から「繰上げ、繰下げ」の両制度があります。(国民年金の繰り上げ・繰り下げ制度のさらに詳しい情報はこちらで)
昭和16年4月2日以降に生まれた人の場合、受け取り開始年齢の65歳を1ヵ月繰り上げて64歳11ヵ月から老齢基礎年金を受け取ると、受給率が0.5%減額になり、生涯99.5%の支給率で計算された年金を受け取ることになります。
また、65歳1ヵ月から老齢基礎年金を受け取り始めると、本来の受け取り開始年齢である65歳から1ヵ月繰下げたことになりますから、0.7%増額になり、100.7%の支給率で生涯年金を受け取れるわけです。
つまり、繰り上げた場合は1ヵ月につき0.5%減額、繰り下げると1ヵ月につき0.7%増額するしくみで、繰り上げることができるのは最高で60歳0ヶ月から、繰り下げることができるのは最高で70歳0ヶ月までとなっており、それぞれ65歳を中心として前後5年の間で、本人が希望する時点から老齢基礎年金を受け取ることができる仕組みになっているのです。
現役世代の手取り賃金の約60%を維持できるのは何歳?
2007年4月に導入が予定されている厚生年金の繰り下げ受給を選択した場合、例えば現行のモデル世代の所得代替率約60%を維持できるのは、何歳ぐらいなのでしょうか。
現在厚生労働省では、厚生年金の標準的な年金(モデル世帯…夫40年厚生年金加入、妻40年専業主婦で国民年金加入の夫婦世帯)の水準を、2023年(平成35年)には現在の59.3%から50.2%に下がると試算しています。
仮に繰り下げの制度を利用して現行の59.3%の水準の額を維持しようとする場合、約18%程度の増額が必要になります(5月20日の参院厚生労働委員会での審議より)。現行の老齢基礎年金の繰り下げ制度と同様に1ヵ月当たり0.7%増という設定で計算すると、26ヵ月分繰り下げて、67歳2ヵ月目から受け取るとほぼ同額になるのです。
今回の年金改正の内容には、支給開始年齢を一律に65歳以降に繰り下げる…というものは含まれていませんでした。しかし、よく考えてみれば、本人の選択で67歳以降に受け取り開始年齢を繰り下げれば、現行どおりの水準の年金が受け取れるということ。心身とも元気で、67歳まで働き続けることができれば言うことはないのですが。もし、それに自信がないのであれば、自助努力によってあらかじめその分を準備しておきなさい!ということのようですね!
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