ワラの家は保険に加入する必要なし
長老さんの答えは、「保険には入らなくてもよい。タダで集めたワラで作っているので、家が潰れたらまたタダで作ればよい」という回答でした。
保険は経済的なダメージに対しての備えです。金銭的ダメージがないのに、保険料を払って備える必要はないという長老さんの考えです。おそらく、ワラの家の場合には、ちょっとした雨、風で簡単に被害に遭うことが考えられます。被害に遭う確率が高いということは、保険料も高くなります。タダで集めたワラの家を建てるために、高い保険料を払うことは合理的ではありません。
もちろん、保険料をかけ始めてすぐに被害に遭えば保険金が支払われ、“儲かる”場合もあります。しかし、保険は儲ける為のものではありません。
リスクには「不確実性」「ダメージ」という2つの意味が
リスクには二つの意味があります。投資の世界で使う「リスク」は不確実性です。儲かることも損することもあり、どうなるか分からないという意味です。保険で使うリスクは「ダメージ」です。つまり「損失」です。保険に加入するにあたっては損失をいかに軽減するかを考えることが大切です。
死亡保険に加入されている方の将来のキャッシュフローをシミュレーションすると、夫が亡くなった方が「経済的に豊かな人生」になる方がかなりいらっしゃいます。つまり、被害に遭うことで、儲かってしまう設計です。これは、非合理な設計です。
リスクマネジメントは多方面からトータルで
保険に加入するに当たっては、具体的に様々な設定でダメージを想定してみます。例えば、医療保険であれば、1泊2日の入院費がほんとうに払えない経済的ダメージなのか、長期入院の場合はどうか?健康保険の対象でない先進医療を受けるハメになったら?などなど。
経済的なダメージとそれに対応する貯蓄額、付随する様々な条件は人によって異なります。また、人は感情を持っているので、合理的な計算だけでは割り切れない部分もあります。
そのようなことをふまえて、例えば病気のリスクに対しては、日頃から健康管理に気を配り病気になる確率を低くする、保険の代わりとなる「蓄える」努力をする、保険加入を検討するなどを同時に行ないます。
リスクマネジメントでは、ダメージの度合いはどれほどなのか、ダメージを被る確率はどの程度なのか?ダメージを和らげるために他に手段はないのか?などダメージを軽減させる方法をあらゆる方向からトータルで考え、実行することになります。
*今回のこぶたの話は、「保険は経済的ダメージを軽減するためのもの」という説明に使うことが主旨のため、長老の保険加入の回答は必ずしも正確ではないことについて、ご了承下さい。
/上野博美