ふたりでひとつの保険にしていませんか? |
夫の生命保険に「妻型」「家族型」などの特約で、妻の保障が付いている例をよく見かけます。しかし、夫婦の保険を一つにまとめておくと、いろいろな不都合が起こってくることが考えられます。そんな例を具体的に考えてみましょう。
夫に万が一のことがあると……
一家の大黒柱である夫に、万が一のことがあったときに困らないように生命保険に加入するはずですよね?不幸にもそんなことが起きてしまったとき、保険会社から死亡保険金が支払われますが、それとともに、その保険契約は消滅します。妻の保障を夫の保険の特約でつけていた場合、主契約が消滅すれば、自動的にすべての特約が消滅します。つまり、妻の医療保障などがなくなることになります。そのとき、妻が健康であれば、新しい保険に入ればよいというだけの話ですが、いつ、どんな病気になって保険に入れない体になるかわかりません。ですから、夫に万が一のことがあったとき、妻の医療保障などが一生なくなってしまう可能性もあります。また、若いうちに入った保険なら月々の保険料は少ない負担で続けられますが、ある程度の年齢になってから新規に保険に入ると、月々の保険料は上がってしまいます。
こういったことを考えると、夫婦といえども、生命保険はそれぞれ個別の契約に分けておくべきだといえますね。
「契約者」は誰にする?
夫婦で別々の契約で生命保険に入っている方でも、どちらの保険も「契約者」を夫にしてある例も多く見られます。これにも注意が必要です。生命保険は、「契約者」「被保険者」「受取人」の関係により、実際に保険金を受け取る際の税金が変わってきます。(参照:保険用語ちゃんと理解してる?)
【契約者:夫 被保険者:妻 受取人:夫】
この場合、妻に万が一のことがあったときには、死亡保険金は「一時所得」として所得税がかかります。妻が入院・手術などをした場合には、一般的な契約では「被保険者」である妻が給付金を受け取ります。(給付金は非課税)
【契約者:妻 被保険者:妻 受取人:夫】
この場合、妻に万が一のことがあったときには、死亡保険金は「相続税」の対象になりますが、そのうち「法定相続人の数」×500万円は非課税になります。また、それ以前に、配偶者の遺産に対しては1億6000万円までであれば相続税は課税されませんので、妻がよほどの財産でも持っていない限り、受け取る保険金に税金がかかることはありません。また、妻が入院・手術などをした場合、前述の例と同様に、「被保険者」である妻が給付金を受け取ります。(給付金は非課税)
妻が専業主婦などの場合、何も考えることなく、「契約者」を夫にしてしまうことが多いようですが、受け取り時のことなど考えると、「契約者」は妻にしておくべきだといえます。また、現在は専業主婦だとしても、将来、仕事をして収入を得たときには、所得税の計算をする際「生命保険料控除」を受けられます。
どちらにしても、夫の分の保険料だけでも、夫が受けられる「生命保険料控除」の上限はオーバーしていることがほとんどですから、わざわざ「契約者」を夫にしておくメリットはないでしょう。
保障の内容も大事、契約形態も重要
このように考えると、夫婦の保険は、二人別々に単独の契約にし、それぞれが「契約者」かつ「被保険者」の形にしておくのが良いのではないかと思われます。ただし、医療保険やガン保険などで、「夫婦型」のほうがメリットが大きい商品もありますので、保険会社の担当者に相談しながら検討してください。また、「夫婦連生保険」といって、夫が亡くなったとき、妻が契約者になって妻子の保障をそのまま継続できる保険もありますので、妻の死亡保障は全く要らないのであれば、そのような保険も検討してもよいかもしれません。
なお、一定の収入を得られる職業についていない場合、保険契約の「契約者」になれないとしている保険会社がほとんどです。無職・学生・フリーターなどは、「被保険者」にはなれても「契約者」にはなれない場合が多いのですが、「主婦」については職業の一つとして認めて、「契約者」になれるとしている保険会社が多いようです。保険会社により取り扱いが違う場合がありますので、まずは検討する保険会社に確認してみましょう。
【関連リンク】
夫婦連生終身保険とは?