住宅購入のお金/住宅購入とライフプラン

賃貸VS購入、徹底分析その3

短期集中連載の3回目。今回は賃貸が購入よりもトクになるパターンを考えてみます。現在のようなデフレ傾向の経済情勢が続くと、賃貸のほうがトクになる可能性が高まります。具体的な数値で見てみましょう。

執筆者:菱田 雅生

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賃貸がトクになるパターンを考えてみる

賃貸と購入の総支払額はどちらが多いか
前回は、賃貸と購入のメリット・デメリットを確認しました。今回は、トータルで支払う費用を比較し、賃貸のほうがトクになるケースを考えてみましょう。

『賃貸VS購入、徹底分析その1』の記事の中で、「現在のような物価が下がるデフレ状態、または物価上昇率の低いディスインフレといわれる状態が続くとすると、一般的に賃貸の家賃は築年数の経過にしたがって下がっていくことが考えられます。不動産価格の上昇も期待できない場合、総支払額での比較や将来の資産価値の比較をしても、賃貸のほうが有利になる可能性が高くなるでしょう。」と書きましたが、本当なのかどうか、ここで総支払額での比較をしてみたいと思います。

家賃10万円なら50年間支払ってもトク

現在のような経済情勢が長期的に続くという前提で考えてみます。

具体的な試算の条件としては、賃貸の場合の家賃を毎月10万円、13万円、16万円という3パターンとし、2年に一度の更新のときに家賃1ヵ月分の更新料がかかり、更新ごとに家賃は1%下がっていくものとします。引越しは考慮しません。

そして、購入の場合の条件は、マンションの物件価格を3000万円、4000万円、5000万円という3パターンとし、頭金を物件価格の2割、諸費用は物件価格の5%、残りを住宅ローン(金利3%完全固定、30年元利均等返済)で返していきます。修繕積立金、管理費、保有税等は合計で年間40万円とし、物価上昇率0.5%で毎年上昇していくものとします。

この条件で試算した結果が以下の表です。表の中の数値は、左にある年数が経過した時点までのトータルで支払った金額の合計を意味しています。

たとえば、50年間のトータルの費用で比較すると、家賃10万円の場合が5554万円で最も少なく、3000万円のマンションを購入するよりも1200万円近く支払う金額が少なくてすむわけです。もちろん、3000万円のマンションの50年後の資産価値が1200万円以上しているなら、一概に賃貸がトクとは言えませんが、一生涯住み続けるという前提で考えると、総支払額の少ないほうがトクだと考えてもよいでしょう。

何歳まで生きるかによっても異なる

この試算結果でわかることはもうひとつあります。それは、それほど長生きしないなら賃貸のほうがトクになる可能性が高いということです。

たとえば、残りの人生が30年だったとします。今後30年間の費用で比較すると、家賃16万円を払い続けたほうが、3000万円のマンションを買うよりも1100万円ほどトクになることがわかります。また、残りの人生が40年だったとしても、4000万円のマンションを買うくらいなら家賃16万円の賃貸に住み続けたほうがトクになります。

人口が減る時代、デフレ・低インフレが続く可能性も

現在のような経済情勢が長期的に続く可能性はどのくらいあるのか。これは誰も正確には答えられないことだと思いますが、個人的な意見としては、その可能性はけっして低くないと考えています。

というのも、厚生労働省の推計によれば、とうとう日本の人口の減少が始まったようですが、人口の減る国の経済が長期的に成長する可能性は低いのではないかと思うからです。もし人口が減る国の経済が成長するなら、単純計算でも私たち一人ひとりの稼ぐ金額が毎年増えていく必要があります。はたして増えるのでしょうか。甚だ疑問です。

だとすると、賃貸VS購入も、賃貸に軍配が上がる可能性も十分にあると考えられます。さて、皆さんはどう思われるでしょうか。

次回は、購入がトクになるパターンを考えてみます。


【シリーズバックナンバー】
賃貸VS購入、徹底分析その1
賃貸VS購入、徹底分析その2

【関連記事】
「賃貸or購入どっちがトク? メリット・デメリットは? 一人暮らしのマンション購入(1)」(一人暮らしの楽しみ方)
「購入と賃貸のメリット・デメリットを比較 住宅は買った方がおトク?」(シングルのためのマネープラン)
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