電柱の地中化整備が進めばいずれは解消する問題なのでしょうが、現状では敷地の前面などに電柱があって建築の際に邪魔になるケースも多いものです。
(神奈川県相模原市 匿名 40代 男性)
景観面の問題はともかくとして、敷地を利用するうえで障害になる電柱の位置を変えてもらうことは、多くのケースで可能です。しかし、そのためにはいくつかの条件を満たさなくてはならないため、あなたの場合に移設が可能かどうかは即断できません。
敷地の前の電柱は、位置を変えてもらえる場合もある
まず、現在の電柱が立っている位置と移設を希望する位置の権利関係について考えてみましょう。
敷地の前面の道路に電柱が立っているときには、その道路が公道の場合と私道の場合があります。
さらに、最近では道路のバリアフリー化や歩道障害物除去などの観点により、個人の敷地内に電柱を立てるケースも多くなっています。
同様に移設後の電柱の位置についても、公道、私道、自分の敷地内の3つが考えられます。
移設後の位置に応じて相手側の承諾を得なければならないのですが、「公道から公道」への移設であれば道路管理者(自治体など)の承諾を受けやすいでしょう。
ただし、自治体によっては条例や取扱基準などで電柱の移設に関する規程を設けているため、決まりがあればそれに従うことになります。
また、「公道から敷地内」「私道から敷地内」「敷地内から敷地内」への移設については、申請する本人さえ承諾すればよいことですから、とくに問題はありません。
なお、自分の敷地内から他人の敷地内への移設は、相手が承諾すれば話は別ですが、現実的にはほとんど無理でしょう。
問題なのは、「敷地内から公道」または「敷地内から私道」への移設、「私道から公道」および「私道から私道」への移設です。
「敷地内から公道」や「私道から公道」への移設は、以前はそれほど難しいことではなかったのですが、公道上の歩行者などの安全面が次第に重視されるようになり、「いったん私有地内に入れた電柱は公道上に戻させない」という自治体が徐々に増えているようです。
また、移設先が私道の場合には、その権利形態によっても大きく異なりますが、私道関係者の承諾を得ることが難しいケースも少なくありません。
次に電柱の移設位置ですが、前面道路内での移設に対して道路管理者等の承諾を得たとしても、移設できるのは原則として自分の敷地の前面の範囲内となります。
自分の敷地の前面から隣地の敷地の前面への移設は、原則として隣地の所有者などが承諾しないかぎりできないことであり、実際に承諾を得ることは困難でしょう。隣地との境界線の延長線上に移設する場合も同じです。
また、隣地との境界ぎりぎりに移設しようとするときにも、隣地の承諾を必要とするケースがあるでしょう。
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