「禁煙外来に行かなければ禁煙は始められない」は思い込み?
これまでの習慣を止める「禁煙」ではなく、タバコのない新しい生活が始められると考える「卒煙」。発想を変えると禁煙がうまく進められることがあります
意志の力だけでは難しいと言われる禁煙。確かに、禁煙に伴う離脱症状を和らげるためにも禁煙補助薬やニコチン製剤を利用するのは有効です。これらは日本でも厚生労働省に医薬品として認めていますし、医師や薬剤師の指導の下で適切に使用すれば安全かつより高い確率でタバコをやめられるのは事実です。
ただ、お薬を使ってまでちょっと、と言う方もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、ご安心下さい。昔は今ほど優れた禁煙補助薬はありませんでしたが、それでも様々な方法で工夫をして禁煙に成功した人がたくさんいらっしゃるのも事実です。
禁煙を始めて口さみしいときには、飴や酢昆布をなめてタバコに手が伸びないようにしたり、口に刺激を与えられるように熱いお茶を飲んでみたり、従来のパイプ型禁煙補助グッズなどをためしてみたり……。今すぐ手軽に試すことができて、昔の人が成功してきたやり方で禁煙に挑戦してみるのは無駄ではありません。
また、これらの古典的な方法だけではやはり禁煙するのは難しそうだ、という方には、ちょっとした発想の転換が非常に有効な場合もあります。
「禁煙」という言葉の持つネガティブな側面
禁煙を成功に導くのに効果的な思考法。それは、「禁煙、禁煙」と考えて気負い過ぎないことです。今まで長年行ってきた喫煙習慣を禁止することが「禁煙」ですが、「禁煙」という考え方は、実は精神衛生上、あまり好ましいものでは有りません。まず、喫煙に限らず、日々続けてきた日常的な習慣をやめるということは、何となく寂しい感じがするものです。近くの行き慣れたお店の閉店や、長年見ていたテレビ番組が終わることなどを思い浮かべていただければと思いますが、いずれの場合も日々の生活に必ずしも必要なものでなかったとしても、やはり寂しく、名残惜しいような気持がすると思います。
また、あまのじゃくのようかも知れませんが、禁止されるとやりたくなるのは人の常。「禁煙、禁煙」と意識すればするほど、「吸ってはいけないタバコ」への想いがつのり、タバコをやめづらくなってしまう思考回路が、私たちの頭の中には自然に備わっているとも言えます。
禁煙ではなく「卒煙」と考えてみるのも効果的
この感情から抜け出すためには、ちょっとした発想の転換が効果的。その一つが、「禁煙」ではなく「卒煙」だと考えるということです。たとえば高校の卒業式は、級友や先生だけでなく、青春時代との別れといった気持ちも高まり、涙が止まらなくなることもあるでしょう。しかし、本当にただただ悲しいわけではないですよね。それは、大学生になるにしろ、社会人になるにしろ、「新しい生活が始まる」という期待感や楽しみが、別れの先に控えているからです。タバコも同じ。「タバコをやめる」と考えるのではなく、「タバコを卒業することで、タバコのない、もっと言えば、タバコに縛られない、新しい自由な生活が始まる」と考えることで、心の中がふっと軽くなり、前向きに禁煙に取り組めるようになる人は多いようです。
まずは明日から「タバコのない新しい生活」が始まるとイメージし、「タバコがいらない新しい自分」に出会うワクワク感に思いを馳せてみましょう。タバコが吸えない、タバコがない、と後ろを振り返りながら進むのではなく、タバコがいらない明るい世界が先にあることを考えて進む方が、スムーズにタバコとサヨナラできる秘訣なのです。