インフルエンザ・風邪予防に重要な「栄養と休養」
良質な睡眠は身体の抵抗力を高めて、風邪やインフルエンザを予防します
<目次>
寝不足で免疫が低下……風邪・インフルエンザ予防に睡眠が重要な理由
動物を数週間に渡って全く眠らせないでおくと、すべてが必ず死んでしまいます。それらの動物を解剖して調べると、体中に菌が増えており、死因は敗血症だったことが分かります。これは、眠れないことで細菌やウイルスから身体を守る免疫の働きが障害され、腸からの細菌の侵入を阻止できなくなったためです。
もちろん人間でこのような実験はできませんが、軍隊での訓練のため長期間にわたって睡眠不足の状態が続くと風邪にかかりやすくなることが知られています。これは、私たちも実感できますね。
細菌やウイルスに対する抵抗力は、睡眠中に維持・強化されているのです。そのため、睡眠時間が減ったり、細切れにしか眠れなかったりする状態が続くと、身体の抵抗力が落ちて、風邪やインフルエンザにかかりやすく、かつ治りにくくなってしまいます。
風邪やインフルエンザになると眠くなるのも、免疫の働きに関係しています。ウイルスに感染した細胞やウイルスを退治しようとする細胞からは、サイトカインという物質が出ます。サイトカインは熱に弱いウイルスを殺そうと、体温を上げます。一方で、他の活動を止めてウイルスとの戦いに専念するため、身体を休ませようとして眠気を催すのです。
睡眠不足は細胞修復・疲労回復に重要な「成長ホルモン」分泌にも影響
また、昔から「寝る子は育つ」といわれてきました。これは科学的に見ても本当のことです。身体の成育に重要な成長ホルモンは、寝ついてから最初に深く眠ったときに多く分泌されます。この成長ホルモンのシャワーを浴びて、子どもは大きく育っていきます。思春期を過ぎると成長ホルモンの量は減りますが、大人でも細胞の修復や疲労回復に大切な役割を果たしています。
成長ホルモンは、睡眠のリズムと関係が深いホルモンです。もし、十分な睡眠時間が取れないと、夜の睡眠の前半に見られる血中濃度のピークの値が少なくなってしまいます。そうなると、日中の活動で傷ついた細胞のメンテナンスに支障をきたし、ウイルスが体に侵入しやすくなったり、風邪やインフルエンザが治りにくくなったりします。
十分な量の成長ホルモンを分泌させるためにも、睡眠はとても大事だということです。
インフルエンザ・風邪予防に有効な寝室の温度・湿度設定法
インフルエンザウイルスは、寒くて乾燥した季節が好きです。毎年冬にインフルエンザが流行するのもそのためだと考えられています。そして乾燥した季節は、ウイルスが生き延びやすいというだけでなく、私たちの体がウイルスに付け込まれやすい時期でもあります。
インフルエンザウイルスは、喉の粘膜から体に入り増殖します。喉の粘膜は湿っていると抵抗力が十分発揮されますが、乾燥すると表面の細胞が死んで剥がれ落ちるため、簡単にウイルスの侵入を許してしまいます。
ですから、インフルエンザの予防には、1日の3分の1を過ごす寝室の環境も大事なのです。気温が下がって乾燥する秋冬でも、寝室の室温を15~20度、湿度は50~60%を保って喉の粘膜を保護しましょう。
睡眠中の呼吸の仕方も、乾燥を防ぐためには重要です。口を開けた状態のいわゆる口呼吸では、喉や口の中が乾燥してしまいます。アレルギー性鼻炎などで鼻が詰まっている人は、きちんと治療して鼻の通りを良くすれば、口呼吸を防げます。
また、お酒を飲むと、喉や鼻の粘膜が腫れて口呼吸になりやすいので、アルコールはほどほどにしたほうが良さそうです。普段からイビキをかく人は、舌がノドに落ち込むのを予防するために、横向きやうつぶせ寝を試してみてください。
マスクや手洗いだけでなく、質の良い睡眠を十分にとって、風邪やインフルエンザから自分と家族を守りましょう。
寒い季節の健康管理に役立つ睡眠のコツは、「寝室の湿度と最適温度の目安…真冬の睡眠に適した環境とは」もあわせてご覧ください。
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