自分に足りなかった基本の部分を教えられ、また目からウロコの調理法に驚かされ、そして私自身とても考えさせられ、勇気付けられました。
著者は、エムズキッチン・サントゥールという恵比寿のフレンチレストランのシェフである水島弘史さん。All Aboutのフレンチガイドの嶋さんも水島さんをこちらの記事で紹介しています。また、科学的な理論に裏打ちされた料理教室でも知られています。
基本となる三つのルール
第一は火のルール
基本的にはずっと「弱い中火」でほとんどの料理がおいしく仕上がる、というもの。
第二は、塩のルール
どんな食材でもその重要の0.8%の塩加減にすると、味が決まる、というもの。
……いずれもとてもシンプルなものですが、私自身もこれに近いやり方で料理を作ってきましたので(弱い中火での調理が効果的であることは、昔買った某フライパンの説明書に書いてあったのでそれ以来実践しており、塩加減については、だいたい1%を目安にしてきました)、直感的に非常に納得がいくものでした。
しかし、読みすすむにつれ、水島氏の調理法は、私の実践していたものなどをはるかに超えてよく考えられ、科学的に裏打ちされ、またよりシンプルかつ丁寧に作りこまれていました。
詳しく書かれた肉の焼き方など、その通りに焼くと、たしかにおいしく仕上がり、オムレツもきれいにでき、とても驚きました。いずれのレシピも、これまでの料理の常識に反するような作り方で、まだ冷たいテフロン加工のフライパンに材料を載せてから「弱い中火」にかけるのです(テフロン加工フライパンを使うことが前提になっています。鉄などのフライパンだと、少し問題があるかも知れません)。
そして特筆すべきは第三のルール、切るルールです。
これは、見開き2ページで簡単に触れられているだけですが、実践してみて驚きました。ある程度よく切れる包丁で、タマネギやニンジンを水島氏のやり方でゆっくり丁寧に切ると、断面は鏡みたいにつるつる。タマネギを切っても涙は出ませんし、生で食べても臭みがあまりなく、炒めるとなかなか焦げ付きません。このやり方で切った野菜でブイヨンを取ると、水っぽくなく、うまみの強い丸みのある味わいになります。
また煮込みなどを作っても、切り方で、料理の仕上がりの味が違います。
とびきりよく切れる高級包丁で作るとサラダや刺身などの味が違う、というような話は知っていましたが、それはあくまでのプロの料理の話だと思っていましたし、煮込みや炒め物でも、切り方がこれほどまでに味に影響するとは思ってもみませんでしたので、とても驚いたのです。
家庭の包丁でも本書に書かれているような切り方なら、断面がつるつるに、きれいに切れます。本には100円ショップの包丁でもOKと書いてあります。
>次ページでは、「料理界最大の迷信」(?)についてとりあげます。