暮らしの歳時記/秋の行事・楽しみ方(9~11月)

【時候の挨拶】9月上旬・中旬・下旬の季節の挨拶と結び文、ビジネスやカジュアルに対応

9月の季節の挨拶「時候の挨拶」には何を書けばいいのでしょう? 書き出しの時候の挨拶文には、ビジネスや学校関係で出す文書・お礼状・目上の方向けの漢語調、またプライベートの親しい友人・知人向けのカジュアルな口語調があります。いつ使うのかがわかるよう上旬・中旬・下旬に分けて、例文や結びの文、コロナや健康に関する挨拶文、9月に使える季節の話題などをご紹介します。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

暮らしの歳時記ガイド

季節の挨拶に何を書く? 9月上旬・中旬・下旬の時候の挨拶と結び文

時候の挨拶とは「拝啓」などに続く書き出しの言葉で、季節感をあらわす

時候の挨拶とは「拝啓」などに続く書き出しの言葉で、季節感をあらわす

9月の季節の挨拶「時候の挨拶」には何を書けばいいのでしょう? 時候の挨拶とは「拝啓」などの頭語に続く書き出しの言葉で、季節感を表します。

時候の挨拶には、ビジネス文書や学校関係で出す文書、お礼状・目上の方向けの「漢語調」と、プライベートの親しい友人・知人向けのカジュアルな「口語調」があります。いつ使うのかがわかるよう、9月の上旬・中旬・下旬に分け、例文や結びの文、コロナや健康に関する挨拶文、9月に使える季節の話題もご紹介します。
<目次>

手紙・お礼状・書類・メールで使う、挨拶文の書き方や構成

ビジネスや学校関係で出す文書・お礼状、プライベートな手紙などを書く場合、【前文】⇒【主文】⇒【末文】⇒【後付】で構成するのが基本です。基本をもとに、必要に応じて細かい要素を変えながら仕上げていきましょう。
 
<構成>
【前文】……「拝啓」などの頭語 ⇒ 時候の挨拶 ⇒ 相手の安否や健康を気遣うことば ⇒ 自分の近況やお礼など
【主文】……いわゆる本文
【末文】……結びの挨拶。相手の健康や繁栄を祈ることば ⇒「敬具」などの結語
【後付】……日付 ⇒ 署名 ⇒ 宛名
 

「漢語調」「口語調」……時候の挨拶文は相手・場面に応じて選びたい

時候の挨拶には、短く簡潔に表した「漢語調」と話し言葉でやわらかな言いまわしの「口語調」がある

時候の挨拶には、短く簡潔に表した「漢語調」と話し言葉でやわらかな言いまわしの「口語調」がある

時候の挨拶は、その時々の季節感を表した言葉。「盛夏の候­」のように短く簡潔に表した「漢語調」と、「夏の盛りとなりました」のように話し言葉でやわらかな言いまわしの「口語調」があります。
 
漢語調と口語調は、相手や場面に応じて使い分けます。一般的に、ビジネス文書や学校関係の文書などでは、かしこまった漢語調の表現が使われることが多く、文書の格を高めてくれます。一方、パーソナルな文書では、より身近な口語調を使う方が多いです。また、ビジネスであっても、口語調を用いてやわらかにする場合もあります。
 
いずれにしても、ネガティブではなくポジティブなものがおすすめです。 
 

9月の季節の挨拶/漢語調の時候の挨拶「ビジネス」編

初秋の涼しさを表す「秋涼の候」。「○○の候」は「○○の折」「○○のみぎり」に置き換えて使うこともできる

初秋の涼しさを表す「秋涼の候」。「○○の候」は「○○の折」「○○のみぎり」に置き換えて使うこともできる

ビジネスシーンでは、かしこまった漢語調の時候の挨拶を使うのが一般的。目上の方への手紙やメールでも使える漢語調の時候の挨拶について、意味とともに例文を交えてご紹介します。時候の挨拶は季節感が大切なため、目安となる時期ごとに紹介しますが、その年によって多少ずれることがあるため、実際の季節感を優先しながら選んでみてください。
 
また、「○○の候」は「○○の折」「○○のみぎり」に置き換えて使うこともできます。

■9月全般で使える「秋涼の候」「秋風の候」「秋晴の候」
  • 秋涼(しゅうりょう)の候=秋の訪れとともに涼しくなってまいりましたが
  • 秋風(あきかぜ)の候=秋風が吹く頃となりましたが
  • 秋晴(あきばれ)の候=秋晴れの気持ちのいい季節を迎えましたが
<例文>
「秋涼のみぎり、貴社におかれましてはますますご繁栄のこととお慶び申しげます。」 
 
■9月上旬の「処暑の候」「重陽の候」「初秋の候」など
  • 処暑(しょしょ)の候=暑さがおさまる頃となりましたが 
    ※「処暑」は二十四節気のひとつで、8月23日頃~9月6日頃。
  • 重陽(ちょうよう)の候=重陽の節句の時期となりましたが 
    ※「重陽の節句」は五節句のひとつで、9月9日に菊を用いて長寿祈願をする行事。
以下は暦の上での初秋にまつわります。初秋は二十四節気の「立秋」(8月7日頃~22日頃)と「処暑」(8月23日頃~9月6日頃)の期間をさすので、9月6日頃までに使いましょう。
  • 初秋(しょしゅう)の候=初秋の時季となりましたが 
  • 早秋(そうしゅう)の候=初秋の時季となりましたが 
  • 新秋(しんしゅう)の候=初秋の時季となりましたが 
  • 孟秋(もうしゅう)の候=初秋の時季となりましたが 
<例文>
「初秋の候、ますますご清栄のこととお慶び申しげます。」

■9月中旬~10月上旬の「白露の候」「仲秋の候」「名月の候」など
  • 野分の候=台風の時期ですが
  • 白露(はくろ)の候=朝露がおりる頃となりましたが 
    ※「白露」は二十四節気のひとつで、9月7日頃~9月23日頃。
  • 仲秋(ちゅうしゅう)の候=仲秋の時季となりましたが 
    ※仲秋は、二十四節気の「白露」(9月7日頃~22日頃)と「秋分」(9月23日頃~10月7日頃)の期間をさします。
  •  名月(めいげつ)の候=中秋の名月の頃となりましたが 
    ※「中秋の名月」は旧暦9月15日。その年の日付を確認して使ってください。2022年は9月10日、2023年は9月29日、2024年は9月17日です。
  • 早涼(そうりょう)の候=秋になり涼しくなってまいりましたが
  • 新涼(しんりょう)の候=秋になり涼しくなってまいりましたが
  • 涼風(りょうふう)の候=秋になり涼風が心地よい頃となりましたが 
<例文>
「白露の折、○○様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。」

■9月下旬~10月中旬の「清秋の候」「秋雨の候」「秋冷の候」など
  • 清秋(せいしゅう)の候=清々しい秋の気配が感じられる季節になりましたが
  • 爽涼(そうりょう)の候=爽やかで涼しい秋となりましたが
  • 爽秋(そうしゅう)の候=爽やかで過ごしやすい秋となりましたが
  • 秋雨(しゅうう)の候=秋の長雨が降る時季となりましたが
  • 秋冷(しゅうれい)の候=秋も深まり肌寒くなってまいりましたが
<例文>
「清秋のみぎり、貴店ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。」
 

9月の季節の挨拶/口語調の結びの挨拶「ビジネス」編

結びの挨拶は、相手や趣旨によって変わります。ビジネスなどのフォーマルな文書でよく使われる、今後ともよろしくとお願いする結びの挨拶、相手の繁栄や健康を祈る結びの挨拶、9月ならではの結びの挨拶、コロナ関連の結びの挨拶を例文で紹介します。
             
■今後ともよろしくとお願いする結びの挨拶
  • 「今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。」
  • 「引き続きご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」
  • 「今後におきましても相変わらぬご厚誼(こうぎ)を賜りますよう お願い申し上げます。」
  • 「これからも変わらぬご支援ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」
■相手の繁栄や健康を祈る結びの挨拶
  • 「貴社のますますのご発展を心より祈念しております。」
  • 「末筆ながら、一層のご隆盛を衷心よりお祈り申し上げます。」
  • 「皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。」
  • 「皆々様のご多祥を心よりお祈り申し上げます。」
■9月ならではの結びの挨拶  
  • 「夏の疲れが秋にでると申します。健康には十分にご留意なされ、さらにご活躍されますことを祈念申し上げます。」
  • 「9月とはいえ残暑厳しい折柄、ご自愛専一にてお願い申し上げます。」
  • 「実りの秋、貴社ますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。」
  • 「吹く風も心地よい季節、ますますご活躍ください。」
  • 「季節の変わり目ですので、皆様体調を崩されませんようご留意ください。」
■コロナ関連の結びの挨拶
  • 「コロナ禍中で落ち着かない日々が続いております。くれぐれもご自愛くださいますようお願い申し上げます。」
  • 「何かと先を見通しづらい状況が続いております。時節柄、くれぐれもお体にご留意なされ、さらにご活躍されますことを祈念申し上げます。」

9月の季節の挨拶/口語調の時候の挨拶「プライベート」編    

「秋風が吹く頃となりましたが」は、話し言葉でやわらかな口語調の時候の挨拶

「秋風が吹く頃となりましたが」は、話し言葉でやわらかな口語調の時候の挨拶

プライベートの場合、書き出しの時候の挨拶は、口語調のカジュアルな表現が好まれます。
 
■上記「ビジネス」編で紹介した漢語調の「○○の候」の意味を表す文は、口語調の時候の挨拶として使えます。 
  • 秋の訪れとともに涼しくなってまいりましたが
  • 秋風が吹く頃となりましたが
  • 秋晴れの気持ちのいい季節を迎えましたが
  • 重陽の節句の時期となりましたが 
  • 中秋の名月の頃となりましたが
  • 秋になり涼しくなってまいりましたが
  • 秋になり涼風が心地よい頃となりましたが
  • 清々しい秋の気配が感じられる季節になりましたが
  • 爽やかで過ごしやすい秋となりましたが
  • 秋の長雨が降る時季となりましたが
  • 秋も深まり肌寒くなってまいりましたが
■その他にも、この時期の情景を綴って挨拶することができます。
秋の七草、虫の声……この時期の情景を綴ってみる

秋の七草、秋桜、虫の声……この時期の情景を綴ってみる

9月向きの時候の挨拶に、相手の安否や健康を気遣う言葉を加えた例文をいくつか紹介します。
  • 「萩の花が風に揺れる頃となりましたが、お元気でいらっしゃいますか。」
  • 「秋の七草に心和む季節となりました。ご機嫌いかがでしょうか。」
  • 「秋桜が風に揺れる美しい季節となりましたが、お変わりございませんでしょうか。」
  • 「虫の音に秋の訪れを感じる季節となりました。その後お変わりございませんでしょうか。」
  • 「台風一過の青空が広がり、にわかに秋めいてまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。」
  • 「二百十日も穏やかに過ぎ心地よい秋へと季節が変わりました。お元気でご活躍のことと存じます。」※二百十日とは立春から210目(9月1日頃)の雑節で、台風に警戒する厄日。
  • 「ようやくしのぎやすい季節になりました。皆さまお健やかにお過ごしでしょうか。」 
  • 「秋空もさわやかな好季節になりました。皆さまお障りなくお過ごしのことと存じます。」
  • 「空の色もいつしか秋めいてまいりました。ご壮健にてお過ごしのことと存じます。」
  • 「うろこ雲が秋空に映えるころとなりました。皆さまお変わりございませんでしょうか。」
  • 「秋風が心地よい時節となりましたが、お元気でいらっしゃいますか。」
  • 「朝夕日毎に涼しくなってまいりました。皆さまお健やかにお過ごしでしょうか。」
  • 「爽やかな秋日和が続いておりますが、お元気ですか。」
  • 「暑さ寒さも彼岸までと申しますが、皆さまお健やかにお過ごしでしょうか。」
  • 「彼岸花が深紅の花を咲かせておりますが、ご機嫌いかがでしょうか。」
  • 「秋色が次第に濃くなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。」
  • 「日増しに秋の深まりを感じる今日この頃、お変わりございませんでしょうか。」
  • 「秋晴れのさわやかな季節を迎えましたが、つつがなくお過ごしでしょうか。」
  • 「ひと雨ごとに秋が深まってまいりました。皆さまお障りなくお過ごしでしょうか。」

9月の季節の挨拶/口語調の結びの挨拶「プライベート」編

この時期どう過ごすのかな……相手を思い浮かべながらことばを綴りたい

この時期どう過ごすのかな……相手を思い浮かべながらことばを綴りたい

プライベートで用いる結びの挨拶も、カジュアルな表現が好まれます。相手に合わせて挨拶の内容を考えてみると良いでしょう。相手の趣味や嗜好に合わせた結びの挨拶、相手の体調を気遣う結びの挨拶、コロナ関連の結びの挨拶の例文を紹介します。参考にしてみてください。
 
■相手の趣味・嗜好・状況に合わせたの結びの挨拶     
  • 「天高く馬肥ゆる秋。秋の味覚を堪能してくださいね。」
  • 「お得意のゴルフの腕が鳴る季節になりましたね。」
  • 「読書の秋ですね。おすすめの本があれば教えてください。」
  • 「お庭も秋めいてくることと存じます。虫の音をききながら、お健やかにお過ごしください。」
■相手の体調を気遣う結びの挨拶     
  • 「日ごとに秋の色が深まってきました。夏の疲れがでませんように。」
  • 「朝夕はしぎやすくなりましたが、油断なさらずお身体にはご留意ください。
  • 「季節の変わり目ですので、体調を崩しませんよう御身おいといください。」
  • 「秋冷のみぎり、お風邪などお召しになれらませんようご用心くださいませ。」
  • 「皆様方の息災を心よりお祈り申し上げます。」
■コロナ関連の結びの挨拶
  • 「季節の変わり目、コロナ禍中で落ち着かない日々が続いております。くれぐれもご自愛くださいませ。」
  • 「夏の疲れが出るころです。コロナ禍もございますので、くれぐれもお身体にはご留意ください。」
  • 「時節柄、思うようにお目にかかることができませんが、皆様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。」
  • 「何かと先を見通しづらい状況が続いております。くれぐれもお身体に気をつけてご活躍ください。」
  • 「時節柄、オンラインでのおしゃべりも大歓迎です。お互い元気で頑張りましょう。」
  • 「テレワークで運動不足にならないよう、お互いに気をつけましょう。」

9月に使える季節の話題

 9月ならではの季節の話題を紹介します。キーワードとして入れてみると、季節感が出ると思います。
 
■花や動植物・食べ物
秋の七草(萩・桔梗・葛・藤袴・女郎花・尾花・撫子)、秋桜、竜胆、われもこう、秋刀魚、松茸、里芋、薩摩芋、秋茄子、むかご、いちじく、梨、葡萄、戻り鰹、月見団子、おはぎ

■風物詩や行事・イベント
防災の日、重陽の節句、敬老の日、中秋の名月、十五夜、お彼岸、お墓参り
   
■節気・時期
白露、秋分、台風、二百十日、二百二十日、いわし雲、
▷ 【9月行事・歳時記】重陽の節句・十五夜・秋彼岸…風物詩や行事まとめ
 

 オリジナルの挨拶を入れることも考えてみましょう

庭できいた鈴虫の声が忘れられない……相手の顔を思い浮かべてみると文章が浮かびます

庭できいた鈴虫の声が忘れられない……相手の顔を思い浮かべてみると文章が浮かびます

相手の顔を思い浮かべながら考えていると、よりパーソナルで身近な文が綴れます。下手でもいいので、素直に、自分の言葉で考えてみると、心に届く手紙になるでしょう。
  • 「お元気ですか? この時期になると、お庭できいた鈴虫の声を思い出します。」
  • 「新学期が始まり、普段のペースに戻った頃でしょうか。我が家は歩き出した長男から目が離せない日々です。」
  • 「赤とんぼが群れ飛ぶ季節となりました。一緒に遊んだ日々が懐かしく思い出されます。」
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