運動と健康

呼び方でチーム力を変える!BIG BOSSに学ぶ既成概念の壊し方

【アスレティックトレーナーが解説】今年のプロ野球を「面白くするんじゃないか」と大きな期待が寄せられている日本ハムファイターズの新庄剛さん。自身のことを「監督」ではなく「BIG BOSS」、従来の「一軍」「二軍」を「BIG組」「BOSS組」と改めた狙いとは? 既成概念を壊し、チームメンバーの意識を変えるBIG BOSS流のチーム作りをご紹介します。

西村 典子

執筆者:西村 典子

アスレティックトレーナー / 運動と健康ガイド

「呼び方一つ」で意識が変わる! 既成概念を壊す呼び方改革

晴天の野球場

一般的な呼び方を変える狙いはどこにあるのだろう

今年のプロ野球を「面白くするんじゃないか」と大きな期待が寄せられている日本ハムファイターズの新庄剛さん。監督就任以降、多くの人が気にも留めなかった「呼び方」を変えています。チームの監督としても「監督」とは呼ばせず、「BIG BOSSと呼んで欲しい」と自らリクエストし、大きな反響を呼びました。これにとどまらず春季キャンプでは「一軍」「二軍」という呼び方を「BIG組」「BOSS組」に変更。選手を2つのグループに分けていることには何ら変わりはないのですが、呼び方を変えることで選手の意識を変えていくことを見透した「呼び方改革」と言えるでしょう。

「一軍・二軍」、「レギュラー・控え」、「メンバー・メンバー外」など、試合開始から出場する選手と試合開始時に出場することができない選手を分ける言葉はいろいろあります。しかし「二軍」「控え」「メンバー外」といった呼び方でまとめられる選手はどのように感じるでしょうか。プロとして活躍する選手であれば、「一軍になれるようがんばろう!」と意欲をかき立てられるかもしれませんが、ここには「一軍の選手を振り落としてでも、自分が這い上がるんだ」という一種の競争心が芽生えます。また一軍の選手がある日を境に二軍へと変更されると、どうしても「降格させられた」という印象を持ってしまいます。こうした心理が選手に与えるストレスは少なくないものです。
 

「チーム一丸」を実現するグループ分けのコツ

一方「BIG組」と「BOSS組」と呼ばれた場合はどうでしょうか。まずどちらが優れていて、どちらが劣っているといった優劣の印象がなく、どちらも対等でフラットな印象を受けます。新庄さんは「BIG組」「BOSS組」それぞれのキャンプ地にも宿舎を準備することから、どちらのグループに対しても選手をみる、指導する機会があることがわかります。選手としても、たとえば「BIG組」から「BOSS組」に変更されても、「BOSS組」で新庄さんにプレーを見てもらうことは可能ですし、「ここでできることをやっていこう」と前向きに受け止められるのではないでしょうか。

脳神経外科医であり、多くのスポーツチーム、アスリートに対する指導経験のある林成之さんは、その著書の中で「チーム内での競争を生まないために」呼び方を変えることを提案されています。「チーム一丸となって戦おう」と選手たちを鼓舞したところで、「一軍」「二軍」と分けることはチーム内での競争を生み、真の「チーム一丸」は本能的に実現がむずかしいとわかっているからです。
 

「最後の砦」と呼ばれる選手のメンタリティ

円陣を組むサッカー選手

最後の砦と呼ばれるだけで何とかチームのために活躍したいという気持ちが芽生える

林さんが提案した例として、サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」での呼び方が挙げられています。ここでは「一軍」「二軍」ではなく「エース軍団」「砦軍団」としました。「砦軍団」の選手たちは文字どおり「エース軍団がうまくいかなかったときの最後の砦として活躍が期待される選手たち」というものです。最後の砦と呼ばれる選手たちは、試合中においても「私の出番が来たら、どうやってチームを守るか」という視点を持つようになったと林さんは述べられています。「控え」と呼ばれるのか「最後の砦」と呼ばれるのか、その呼び方一つにおいても選手のメンタリティは大きく変化すると言えるでしょう。

呼び方一つで選手の受ける印象を変え、一人ひとりが大切な戦力であることを暗に示している新庄さんの改革は、スポーツにたずさわる指導者やビジネスの現場においても参考になるところが大きいと思います。普段何気なく使っている呼び方も、言葉を変えるだけで印象が変わり、チームとしてより大きな力を発揮するきっかけとなるかもしれませんね。

■参考書籍
『勝負強さの脳科学』林 成之著/朝日新聞出版
 
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