メンタルヘルス/その他の心の病気

ゴミ屋敷の原因!? “溜め込み症”を克服するには?(2ページ目)

世間でもよく話題になるゴミ屋敷。ゴミを極度に溜め込んでしまうクセは「溜め込み症」と呼ばれる病気であることが分かってきました。そこで、溜め込み症を生み出す3つの要因を紹介し、それぞれの要因に心理療法ではどのようなアプローチを行うのかを紹介します。

矢野 宏之

執筆者:矢野 宏之

臨床心理士 / 心の健康ガイド

溜め込み症の治療は難しい?

溜め込み症を治療する上では、次のような問題が指摘されています。

  • 自分が病気であることを否定する
  • がらくた・ゴミがたまっているという認識がない
  • 治療に対して防衛的になる

これらの問題点を解決しなければ、治療を始めることができません。ゴミ屋敷の本人の意志を無視してゴミを撤去しても、治療したことにはならないのです。

根本的な解決のためには、ゴミ屋敷の本人の話をきいて共感することから始めていきます。その中で、“人生において価値を置いているものについて”たずねていきます。例えば、もっと楽しく過ごしたい、友達と遊びたいなどの話が出てくれば、「家が片付いたら、友達が遊びにくるかもしれませんね」のように話を進めていきます。このように共感しながら、がらくたやゴミについて少しずつ言及していくのです。

溜め込み症に対する心理療法

溜め込み症の治療には認知行動療法と呼ばれる心理療法が用いられます。認知行動療法では、溜め込み症の3つの要因に対して、それぞれに対策を立てて治療していきます。

■収集する
これは、本人と一緒に町中を散策しながら治療を行います。溜め込み症の人は、散策中でも様々なものに注目して、拾って帰りたくなる衝動に駆られます。その際に、治療者が、「本当に必要なものなのか?」などのように問いかけていきます。この練習を通して、必要なものなのかを考える習慣と、必要のないものは拾わない習慣を身につけます。

■捨てられない
溜め込み症の人は、ものを捨てる際に感情的な苦痛が伴うために捨てられません。そのため、捨てる際の感情的な苦痛に慣れてもらうために、がらくた・ゴミを実際に捨ててもらう練習をします。この練習の最も大切な点は、溜め込み症の本人が捨てることです。たくさんの苦痛を経験することで、がらくた・ゴミを捨てることへの苦痛が緩和されるのです。

■整理できない
この症状に対しては、「捨てるものをしっかり定義する」という方法をとります。例えば、10年間使っていないものや、2つあるものは捨てる。自分に合わない服や装飾品は、捨てるなどのルールを一緒に決め、整理する練習を行います。

まとめ

日本では、まだ溜め込み症が病気であるという認識が広まっていません。単に物珍しいという理由だけで、ゴミ屋敷が取り上げられています。今後は、心の病気であり、治療する方法があるのだという認識に変わっていくことを願っています。

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