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牧阿佐美『A.M.ステューデンツ』インタビュー! 後編(5ページ目)

プロダンサーの育成を目指し、1979年に結成されたA.M.ステューデンツ。牧阿佐美バレヱ団主宰・牧阿佐美氏による指導のもと、これまで数多のダンサーを輩出してきました。この秋には第31期生オーディションを開催し、明日のスター候補を募ります。ここでは、主宰の牧阿佐美氏にインタビュー! A.M.ステューデンツの教育方針とその想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

バレエガイド


世界的に見ても、近年のバレエ界はスター不足という気がします。要因は何だと思われますか? 教育現場で近頃の子に何か感じることはありますか?

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(C) TOKIKO FURUTA

牧>確かにスターは少ないですよね。きっと、時代的なものなんでしょう。今のひとたちの方が断然キレイなんですが、昔のひとほどバレエに賭けてない。昔はバレエをやっている子はそれしかないからバレエばかり一生懸命やっていましたが、今は世の中なんでもあって選択肢が多くなっている。私たちが踊っていた頃は、衣裳ひとつにしても布もないし、制作者もいなかった。なので、自分たちで衣裳をつくったり、海外の衣裳をもらってきて壊してみたり、いろいろ研究を重ねました。結局それも、創作につながるんですよね。与えられたものを着て踊ってるだけではわからないものが経験できる。

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(C) TOKIKO FURUTA

今の子たちは、かぎホックひとつ取れても先生のところに持って来ます。自分で付けるという発想がないんです。私たちは、装置も簡単なものなら自分たちでつくりましたよ。ヴェールで舞台いっぱいに覆ってみようと考えて、布を沢山買ってきて稽古場に広げてミシンをかけてみたり。そうした作業の中で、舞台のイメージがいろいろ広がっていき、それがまた踊りの役にも立った。昔のダンサーは“もっとこうしよう”といろいろ工夫したけれど、今の子たちは用意されたものを着るだけ。私たちが“こうしたらもっとキレイになるんじゃないの?”と言っても、本人にはわからない。その辺はとても変わったと思います。

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(C) TOKIKO FURUTA

自分で物をつくらないと想像していく力が養われないので、作品をつくるのもなかなか難しいでしょうね。私たちは、舞台を画の額縁だと考えます。その中で、ここに階段をつくって高いアクセントを付けたら、こちらには小さい装置がいっぱいあって……、と想像する。それがまた振付に効果的に反映されていく。今のひとはあまりそういうことを考えないけれど、ハングリーな方がより知恵を使うことになる。昔は踊るだけではなく、つくったり、考えたりしなければならなかった。何でもやらなければいけない時代だった。大変ではありましたけど、良い時代だったと思います。

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(C) TOKIKO FURUTA

今はインターネットがあったり、電化製品が発達していて無いものに替わる何かを考え出すような頭の使い方はしなくて済むようになっていますから、これはしょうがないんだなと思ってます。今のひとたちは踊る部分は優れてるけど、与えられたものが全てで、他の部分はダメだったりする。トータルに目がいかないかわりに踊ることに集中すれば技術の細かな部分は磨かれていきますが、それは全員が同じですし、もっと人間としての大きな魅力を備えて突出するひとが少ない。

一般から突出した子を育てるのが難しければ、二代目、三代目から優れた才能が生まれればいいけれど、今は何でもある時代なのでこれもなかなか難しい。親が強制的に子どもに苦労させるくらいでないと、二代目だからといってラクしてしまったら同じですから。

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(C) TOKIKO FURUTA



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