セクシュアルマイノリティ・同性愛/ゲイシーン

このGW、よくやった企業と残念な企業(2ページ目)

今年のGWの東京レインボープライドは安倍昭恵さんや夏木マリさんも登場し、大成功と言える盛り上がりを見せました。また、GAP原宿店がGWをレインボーに彩ってくれたことが大きな話題になりました。それとは対照的に、GWが明けた直後、任天堂のがっかりな対応に鼻白む思いをした方が多数…。今回は、たまたま同時期に明暗を分けたセクシュアルマイノリティをめぐる企業の対応について、書いてみたいと思います。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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たかがゲーム? そんなことはありません

ゲーム世界に自分や友達のMii(ミー)と呼ばれるアバターを作り、恋愛や結婚、出産などの人間関係づくりを楽しめる任天堂の「トモダチコレクション 新生活」が、北米でも発売されることになりました。が、海外のロールプレイングゲーム(「ザ・シムズ」など)では同性婚できるのが当たり前になっているなか、このゲームでは同性婚ができない仕様になっています。そこで、アリゾナ州に住むファンの方が「自分の婚約者のMiiとゲームの中でも結婚したいのに、それができない。自分のMiiか婚約者のMiiの性別を女性に変更するか、結婚という選択肢をあきらめるしかない。仕様を変更してほしい」と訴えていました。

これに対して5月7日、任天堂米国法人が「任天堂は『トモダチコレクション』の中で、どのような形での社会的主張も行うことは意図していません。ゲームのリレーションシップオプションは面白い別世界でのもので、現実をシミュレートするものではありません。本作を風変わりで面白いゲームとしてとらえ、そこには何の社会的主張も存在しないことをファンの皆さんに理解してほしいと思っています」と回答し、仕様変更を行わないことを発表。

この対応に、海外メディアはこぞって批判。「Nintendo says no to virtual equality in life game(任天堂はライフゲーム内に生きる人たちに平等権は認めないと発表)」などという見出しが躍りました。「任天堂の決定は、同性愛者と関連を持つことを嫌っているか、非常に保守的な考えかのどちらかであることを示している」「欧米では重大な過失となって企業イメージの悪化を招くだろう」と先述のファンの方も失望を表明しました(詳しくはこちら

「何の社会的主張も行わない」というのは「同性婚支持派にも反対派にも肩入れしません」と言いたかったのかもしれませんが、すでに大勢の人たちが現実世界で同性結婚している状況で、そういう人たちが人間関係をつくる(現実の社会を模した)ライフゲームの世界で存在しないことにされる(排除されている)のは、どう考えても社会的主張(もっと言えば差別)だろう、ということです。もしこれが、肌が黒い人のMiiを作らせないという仕様だったら、即座に大問題になりますよね。

20年前(まだ同性婚が認められていなかった時代)ならともかく、カナダでは完全に同性婚が認められており、アメリカでは結婚防衛法が撤廃され(国として同性婚を認め、州でOKになれば男女と完全に平等ということになり)、カリフォルニア州やニューヨーク州をはじめ約1/3の州・地域で同性婚が認められ、さらにmarriage equality(「法の下の平等」に基づき、結婚したくてもできず、二級市民に貶められている人たちの権利を取り戻し、不当な待遇を解消すること)が達成されつつあるわけで、任天堂がそういう社会情勢についていけてない、「結婚の平等」ということの意味を理解していないことを露呈したわけです。

9日、一転して、任天堂の米国法人は「『トモダチコレクション』に同性の恋愛関係を含まなかったことで多くの人を失望させた」と謝罪。技術的に大幅な修正を伴うため「今回は変更は不可能」としながらも、続編を出す場合には「ゼロからデザインし、すべてのプレーヤーをよりよく表現する」と表明しました。続編では同性婚もできるようになるということで、よかったよかった(日本版もそうなるといいですね!)

ゲームつながりで言うと、任天堂の騒ぎと並行して、「ある男子学園に潜んで次々に男子を襲うホモ人狼を見つけ出す」という設定の、とんでもないゲームアプリがリリースされることがわかり、「悪趣味で極めて差別的」「『男がゲイに近づくのは危ない』という偏見を完全になぞっている」「ネタという枠組みで差別が許されると勘違いしている」と批判が噴出しました。この稀に見る悪質なゲーム「アッー!とホーム黙示録 ~人狼ゲームやらないか~」をリリースしたハッピーゲーマーは13日、「誤解を招いた」と公式サイトで謝罪しました。寄せられた意見をもとにゲーム内の文言、画像、表現などを一部修正したうえで、12日からAndroid版がリリースする意向だそうですが…。(詳しくはこちら

※北丸雄二さんが今回の任天堂をめぐる騒動について「日系企業のみなさんへ」という記事を書いています。企業の方に限らず、みなさんぜひ、読んでみてください。

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