フレンチ/東京のレストラン

ラ・ロシエル山王(溜池山王)

「料理は美しくなければならない。」ラ・ロシエルの料理を前にすると、こう語る偉人がいたような気にさえなる。徹底して季節感にこだわり、丁寧に料理という作品を作り続ける鉄人、坂井宏行。有能な弟子も育ち、アイデアに満ちた世界は着実に広がっていく。安心してフランス料理の「今」を感じることができるだろう。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

料理の持つ美しさ

かつて「料理の鉄人」という番組があった。和食、フレンチ、中華と鉄人が揃い、そこに名だたる料理人が挑む番組だった。撮影時に知らされる素材を元にキッチンスタジアムで繰り広げられる「バトル」は新鮮で、私も毎回食い入るようにみていたものだ。フレンチの鉄人は、当時渋谷の東邦生命ビルの最上階にあったラ・ロシエルの坂井オーナーシェフ。繊細で美しい料理は印象的で、ほとんど負けたことはなかったのではないか。
ラロシエル

スッポンのフラン 蝦夷ツブ貝と生青海苔ソース~ウエディングメニューより

当時2度食事に出掛けたことを覚えている。料理に「美しさ」という要素を強めに取り込み、夜景の煌びやかさにも負けない料理であった。その反面、何かしらの力強さが足りないようにも思えていた。それはまだフレンチが「ちょっと敷居が高い」なんて思われていた時代に「万人受けするフレンチ」を目指していたからではないかと今になって想いを馳せてしまう。

それから15年は経ったか、時代は変わった。ラ・ロシエルも移転し、坂井シェフの弟子たちが店を切り盛りする。先日、桜の季節に開かれた友人の結婚パーティーで供された料理はもはやウエディング料理の域を突き抜けたものだった。それは生涯幸せを誓った友人と同様、永遠に記憶に残る料理といってもいい。ハレの日だけに印象度は高くなってしまったことを含みつつ翌週にディナーに出掛けてみた。
ラロシエル

赤坂の喧騒から離れた静かなエリアだ

ラ・ロシエル山王は、キャピトル東急ホテルの隣のタワーマンションの一階にある。レセプションからメインダイニングへのアプローチに特別な仕掛けがあるわけではないが、赤と白を効果的に使ったインテリアはブライダルを意識したものだろう。その正方形的な空間に決して面白味があるわけではないが料理に変わらぬ美しさと旨みがあればインテリアが華美になる必要はない。

料理は現代フランス料理の現在そのままに、素材を丁寧に仕込み、加工し、皿を彩る。そこには変わらない「美」があった。

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