リーダーシップ/リーダーシップの基本知識

部下から「ダメ出し」ができるチームは強い……ゴールに導く!

部下から「ダメ出し」される上司は、なんだかカッコ悪い。そう思っている方は多いでしょう。しかし、「ダメ出し」される上司こそ、今の時代はチームをゴールに導ける確率が高い、と確信しています。その理由はなんだと思いますか?

中竹 竜二

執筆者:中竹 竜二

ラグビーガイド

部下から「ダメ出し」される上司……「そんなやり方じゃダメです!」

部下から「ダメ出し」

部下から「ダメ出し」

「そんな戦略、機能しませんよ」「こんな練習、追加してほしいんですけど」「もっと効率よくやりませんか」――。

これは、リーダーの言葉だと思いますか? それともフォロワーの言葉でしょうか?

答えは、後者のフォロワーです。早稲田大学ラグビー蹴球部や、U20 (20歳以下)ラグビー日本代表チームで、監督である私が、選手たちから「ダメ出し」されたときの一例です。一般的に監督は、スポーツチームのヒエラルキーのトップ。全権を握る監督、会社で言えば社長や部長が出した戦略や戦術に「ダメ出し」をするのと同じですから、考えられないと思う人もいるのではないでしょうか。

しかし、私はこのメンバーからの「ダメ出し」をことのほか大切にして、チームを作ってきました。そして、それは確実にゴールの達成に結びついてきたと思います。

その理由を、今回も「“カリスマリーダー”を目指すのは危険!」と同様、「桃太郎」の例を使って書きたいと思います。
 
<目次>
 

オーラのないリーダー・桃太郎の物語

桃太郎が犬、キジ、猿を引き連れて、鬼が島に鬼退治に行こうとしています。リーダーのはずなのに、この桃太郎はなんだかオーラがなく、頼りないリーダーに見えます。

彼はメンバーを強く引っ張ることが苦手です。鬼が島の攻略をどうするのか、戦略や戦術を作ってみるものの、それほど自信がありません。そこで、桃太郎は「よし、みんなで考えよう。意見があったらどんどん言って!」と、犬、キジ、猿に問い掛けることにしました。

すると、意見も不満も出てくる、出てくる。桃太郎が考えた戦略や戦術に対して、「こういうケースも想定したほうがいいね」「僕の強みは、こうしたほうが活かせるよ」「こういう訓練を加えなきゃ」と、次々と「ダメ出し」をするのです。桃太郎は、それに対して「いいね!」と言って、それを取り入れていきました。

こうした場合、メンバーが鍛えられるのは、「自分で考える力」です。鬼が島の攻略というゴールに対し、どんな戦略が有効なのか、自らはどんな役割を果たすべきか、そのためにどんな訓練を積まなければならないのかを主体的に考えます。犬は足の速さと歯の強さを、キジは高く飛ぶ力と鋭いクチバシを、猿はすばしこさという強みをそれぞれ自覚し、その活かし方を常に意識するようになるのです。
 

常に自分で考えていれば、非常事態にこそ強くなる

これが、勝負の現場ではどのように機能するのでしょうか。いくら優れた戦略を取っていても、そしてそれを遂行できるだけのフォーメーションが完璧でも、現場では予想外のことが常に起こります。そんなとき、自分で考えることが常になっている犬、キジ、猿は、リーダーである桃太郎の指示を待つことなく、自分の強みを最大限発揮しようとします。

たとえば、鬼が体に帷子(かたびら)を巻きつけてきたら。「くちばしで、帷子の隙間を突き刺そう」とキジ。鬼が体に油を塗ってきて、体がぬるぬるしていたら。「木の上から飛びついて、目隠しをして身動きを取れないようにしよう」と猿。想像以上に多くの鬼が出てきたら。犬はそのスピードを活かして、「とにかくできるだけ多く仲間を集めてこよう」と判断する……。

あらかじめ描いていた戦略や戦術が機能しなかったとしても、パニックに陥ることなく、犬、キジ、猿がその場その場で自律的に動ければ、臨機応変に対応することで、シナリオになかった最適解をその場で導き出すことができるのです。
 

「ダメ出し」できる環境が、「指示待ち」をなくす

私はもともと、ぐいぐいとチームを引っ張っていくことはあまり得意ではなく、ゴールの達成には、まわりのメンバーがリーダーである私をいかに引っ張ってくれるかが重要でした。ですから、私の仕事は、私やチームを自律的に支えてくれる優秀なフォロワーを育てることでした。

そういうフォロワーを育てるための1つの方法は、ふだんから「リーダーが絶対的存在」であることを捨て、いつでもリーダーに物申せる環境をつくることです。つまり、リーダーに「ダメ出し」できなければなりません。すると、全員がリーダーと同じ気持ちを持ち、最終的に決断を下すのはリーダーだけれど、フォロワーもリーダーと同じように考えるようになります。正解を与えられたり、指示されたりするのを待たなくなるのです。

加えて言うならば、何より、本当にメンバーが作った戦術や練習メニューのほうが、私が作ったものよりずっと優れているほうが多かったのです。だって、私より彼らのほうがずっと現場にコミットしているのですから。
 

「誰が言ったのではなく、何を言ったのか」を大切に

上記で書いてきたチームを言い換えると、メンバーの誰もが言いたいことを言える組織です。そのためには、まずリーダーが率先して見本を見せなければなりません。部下からダメ出しされても、グッとこらえて、耳を傾ける。それを繰り返す。それでも難しいときは「誰が言ったのではなく、何を言ったのか?」を自問していました。この問が何度も救ってくれました。是非、参考にしてみてください。

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