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ダンサーズ・ヒストリー 演出振付家 小野寺修二(2ページ目)

演出振付家として、またダンサーとして、幅広いシーンで注目を浴びる小野寺修二さん。最新作『鑑賞者』にかける想いは、先日お伝えした通り。ここでは改めてそのダンス人生を振り返り、情熱の源を探ります。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

バレエガイド


“面白いもの”を作りたい!

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「水と油」時代の公演
「不時着」(C)石川純

当初は全てが手探り。劇場側に「ゲネプロ(公演直前に本番同様の状態で行うリハーサル)はいつですか?」と聞かれても、ゲネプロという言葉自体わからない。集客の方法もわからない。

「“じゅんじゅん(高橋淳)”“ももこん(藤田桃子)”“おのでらん(小野寺修二)”という三人だったので、完全にピエロ集団だと思われてたようで(笑)。かなり苦戦しましたね。あと根本的な問題で、あの頃は作品もつまらなかった(笑)。試行錯誤の連続で、方法論を見つけるのに5年くらいかかった気がします」

もちろん、舞台収入で食べていける訳もなし。舞台人につきものの哀しい現実だ。だが小野寺さんの場合、3年間のサラリーマン生活が支えになった。

「勤めていたのが商社だったので、なかなかいいお給料をもらってたんです(笑)。しばらくは貯金を切り崩して食べてました。でも、あっというまに底に行き着くんですけど(笑)」

その後は、バイトの傍ら舞台活動に打ち込む日々。とはいえ、いいトシを した成人男子、将来の不安もあったはず。ゆくゆくは舞台で生計を……などという夢を描いていたのだろうか?

「それはなかったと思います。本当にムチャクチャなんですけど、“今が面白ければいい”なんて生き方をしてた。そもそもスタートが遅いので、ちょっと諦めてたというか……。一度は社会に出て仕事をしてたし、その時すでに27歳だったので、少し大人ではあった。なので、何とかしたくても、何ともならないこともわかってた。自分の中で、ちゃんと割り切っていたような気がします」

時代の空気もあった。当時のコンテンポラリー・ダンス界は、コンドルズ率いる近藤良平や、珍しいキノコ舞踊団の伊藤千枝、伊藤キムなど、新たな才能が頭角を顕しはじめていた時代。だが彼らも皆模索の過程で、成功モデルのケースがない。何をやったら成功なのか誰もわからない。

「だからこそ僕らも、“行けるところまで行こう”という感じだった。売れたいとかではなく、面白いものを作りたいって純粋に思ってた。有能なひとたちが一杯いる中に、僕らも混ぜてもらいたいという気持ちがあった。今思うと、刺激的な時代だったのかもしれない」
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「水と油」時代の公演
「スケジュール」(C)青木司


『水と油』に転機が訪れたのは、結成から五年後のこと。この年、初めて海外のフェスティバルに進出する。

「ニブロール(矢内原美邦率いるカンパニー)がフェスに行ったと聞いて、僕らも挑戦しようと……。だけど、その時はもう『水と油』をどう続けたものか、辞めようかとも思ってたんです。何となく、これ以上は上手くいかないだろうなって感じてた。でもせっかく言葉を使わない舞台をやってる訳だし、外国で発表するというのはひとつの可能性でもある。とにかく、ムリしてでもツアーをやろうと決めて」

1ヶ月半に渡り、イギリスとフランスでツアーを実施。『水と油』は、予想以上の好評を得た。エディンバラでは賞にノミネートされ、日本では2000年度の東京都主催千年文化芸術祭優秀作品賞を、ナイロン100℃、ク・ナウカと共に受賞する。突如もたらされた栄光に、喜びの反面、戸惑いもあったと話す。

「始めはやっぱり嬉しくて、毎回与えてもらう課題を、もう無我夢中でやっていた感じです。でも3~4年が過ぎた頃、“『水と油』らしい”と言われることが内部ではもう飽きていて、新しいことをやると“『水と油』らしくない”って言われてしまうようになった。それで、気付かないうちに守るものが出来てしまったというか……」

注目の高まりにつれ、生まれてきた周囲とのギャップ。その溝は、次第に深さを増してゆく。

「ちょっと一旦休みたい、少し自分の時間が欲しいという話になって。そのとき始めて、みんなのやりたいことを言い合ったんです。そうしたら、方向性も大分違っていた。それはそれで良かったけど、とにかく一度立ち止まってみようと……」

世の中的には“これから”という時期だけに、惜しむ声も沢山寄せられた。だが、当人たちにとっては節目の時期だったのかもしれない。

2006年、『水と油』は活動休止を宣言する。

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「水と油」時代の公演
「急降下」(C)石川純



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