キレて怒りをぶつけると、険悪なムードで会話にならなくなる
「ケンカをするほど仲がいい」「ケンカをきっかけに絆が深まる」などと言われることもありますが、本当でしょうか? ケンカを通じて本心からわかり合うことができたなら、ケンカをした意味もあるでしょう。しかし「キレて怒りをぶつけるだけのケンカ」で終わってしまったら、お互いへの不信感や不満が募っていくだけです。たとえば、相手が連絡もなく約束の時間に30分も遅刻してきたら、待たされる側にはイライラが募ってしまいます。すると怒りに任せて、「何時だと思ってるの? 待たされる身にもなってよ!」「まったくルーズなんだから!」というように、怒りの感情をそのままぶつけてしまうこともあるかもしれません。
しかし、このように責めるような言い方をされると、相手は無意識のうちに防衛体制をとってしまいます。すると、「そっちだって遅刻したことあるくせに」「ルーズって決めつけないでよ!」というように「売り言葉に買い言葉」でお互いを攻撃しあってしまうでしょう。こうした険悪な会話が続くと、話し合い自体が成立しなくなってしまいます。
「怒り」を効果的に伝える5ステップ
では、どうしたら「キレるケンカ」にならず、冷静に話し合うことができるのでしょうか? 私はカウンセリングの場で、以下の5つのステップで話し合うことをお勧めしています。Step.1 深呼吸してから話し合いの場をつくる
怒りを感じたときこそ、冷静になること。そのためには、まず大きく深呼吸をします。そして、「ちょっと話したいんだけど、いい?」と声をかけ、相手の斜め前の位置に座りましょう。この位置だと、お互いの目線が真正面にならないため、緊張しにくくなります。
Step.2 第一感情と、何に対して怒っているのかを伝える
怒りは「第二感情」と呼ばれています。自分の感情を見つめ、怒りの前に湧く「第一感情」を伝えます。先の「遅刻」の例では、待つ側は相手を待つ間にイライラが溜まってしまいましたが、そのイライラの前には必ず「第一感情」が生じています。「こんなに遅れてどうしたんだろう。何かあったのかな?」という心配。「待ち合わせ場所を間違えたのかな?」という不安。こうした感情が第一感情です。
第一感情が解消されないと、「怒り」という第二感情が湧いてしまいます。そのことも伝えましょう。「すごく心配したし、場所を間違えたのかと不安になっていたんだよ。その気持ちがずっと続いてたから、だんだんイライラしてしまったんだ」というようにです。すると、自分の気持ちを全部伝えられるため、気分がすっきりするでしょう。そして聞く側には「心配をかけて申し訳なかった」という反省の気持ちが芽生え、「ちゃんと話し合わなければいけないな」という関係修復への意欲が生まれてくるものです。
第一感情と第二感情との違いについて知りたい方は、「無益なケンカを避ける『第一感情のIメッセージ』」もご参照ください。
Step.3 解決策までを具体的に話し合う
Step2でしっかりと自分の感情を伝えたら、「次からどうしていくべきか」という課題について話し合います。上記でお伝えした「遅刻」については、(1)「そもそも遅刻しないようにするために、何をするべきか」、(2)「遅刻をすることが分かった時点で、何をするべきか」という2つのテーマで話し合うとよいでしょう。その際には、自分の考えを一方的に伝えるのではなく、相手ができることを本人に考えてもらいます。すると、相手が主体的に解決策を実行しやすくなります。
Step.4 「なぜ?」と思ったらあいまいにしない
相手があいまいな返答をして納得ができない場合は、うやむやにしないことです。「どういう意味? もっと詳しく説明して」と質問し、わだかまりを残さないようにします。
たとえば「こっちだって、あなたが遅刻した時には我慢してるのに……」などとつぶやいた場合、「それはいつのこと? 詳しく話して」と伝え、相手が抱えているわだかまりを話してもらいます。そして、自分にも直すべきところがあれば、Step3の要領で改善案を考え、次回の約束としてそれを相手に伝えます。
Step.5 フォローの言葉も忘れずに
話し合いが終わったら、話し合いに応じてくれたことへの感謝を伝えます。「話し合えてよかった。ありがとう」「これからもいい関係でいたいから、また困ったことがあったら話し合おうね」というようにフォローの言葉を伝え、関係を修復できたことの喜びを共有します。
「怒り」を伝えるときに避けたい! 7つのNGワード
また、怒りを伝えるときには「一方的に思いを伝える」という方法をとってはいけません。相手は、「自分のことを大切に思ってくれている」と感じればこそ、耳を傾けてくれるのです。たとえば、こんな言葉を何気なく使っていないか、チェックしてみましょう。1 「あなたは何をやってもダメ」: 相手のことを全否定する
2 「どうせわたしは○○」: 自分のことを卑下する
3 「あなたには何を言っても無理」: 最初から不可能だと決めつける
4 「君の考えそうなことだ」:一方的な解釈、偏見
5 「他でも同じことをやってるんだろう」: 根拠のない憶測をする
6 「どうして、○○さんみたいにできないの?」: 他人と比べる
7 「あのときも、このときも迷惑していた」: 一度に複数のことを責める
「怒り」の伝え方をロールプレイで練習してみよう
上の5つのステップを頭では理解しても、それを伝えることには躊躇を感じる方もいるでしょう。言いたいことを言えずに我慢し、心のなかに割り切れない感情が残っている方も多いものと思います。怒りに込められた気持ちを伝え、改善策を話し合うことは、慣れない人には高いハードルに感じられるかもしれません。そこで、気の置けない人との間で互いが経験した人間関係のハプニングを思い出し、ロールプレイで話し合いの練習をしてみるのがおすすめです。
何回も言葉に出してロールプレイをやっていくと、同じような出来事があったときに、すぐに対応することができます。ぜひ、ロールプレイで練習してみてください。