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築30年超の中古マンションが今、売れている3つの理由

国策として「中古住宅重視」を掲げたとはいえ、いまだ新築住宅が選好されやすい日本の住宅市場。しかし、首都圏のマンションを築年数別に見てみると、築30年超の中古マンションだけが過去10年で4倍ものシェアを拡大させています。一体なぜなのでしょうか、その理由をガイドの視点で独自分析してみました。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


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日米で「逆転現象」を見せる住宅着工件数

7月18日、米商務省から6月の住宅着工件数が発表され、前月比6.9%増の年率換算76万戸(季節調整済み)となりました。市場予想の74万5000戸を上回り、2008年10月以来、約3年ぶりの高水準となりました。アメリカ住宅市場の回復に期待がかかります。

ただ、この74万3000戸という数字、本当に高水準と言えるのでしょうか。

わが国日本を振り返ってみると、昨年(2011年)1年間の住宅着工件数は約83万4000戸(国土交通省)でした。日本の人口は約1億2800万人。これに対して米国は約3億1000万人と、約2.4倍の差があります。一般に人口が多ければ、その分、住宅需要は高まるはずです。にもかかわらず、日米を比較した場合、新設住宅着工件数に大きな差異は見られません。一体なぜ、日本のほうが住宅着工件数が多いのでしょうか。

理由はいたって簡単です。米国では中古住宅の流通市場が発達しており、新築住宅よりも中古住宅が好まれる傾向にあります。事実、2010年1年間に全米では約491万戸(全米リアルターズ協会)の中古住宅が販売されました。米国では中古住宅を取得し、必要に応じてリフォームするライフスタイルが定着しています。

そのため、既存住宅の取引が市場全体の約8割(新築は約2割)を占めるまでに中古住宅流通は活発化しており、結果、住宅着工件数の日米“逆転現象”を引き起こしています。「新築重視」の日本型スタイルに対し、米国は「中古住宅中心」の住宅志向性が根付いているのです。

過去10年で築年帯別の構成比率は4倍  高まる「築30年超」の中古マンション人気 

こうした経緯もあり、今般、わが国では“米国にならえ”とばかり、国策として中古住宅の流通促進に向けた動きを加速させています。昨年2月には「中古住宅・リフォームトータルプラン検討会」を立ち上げ、中古住宅および住宅リフォームの各市場を整備するための総合プランについて議論を重ねてきました。

また、同時期に「不動産流通市場活性化フォーラム」も設置し、不動産流通市場の活性化を具体的に検討する場を立ち上げました。どうすれば欧米に比べて取引量が少ない日本の中古住宅流通を活発化させることができるのか、その答えを求めて有識者による議論が交わされています。

ただ、首都圏の中古住宅の取引量を「築年帯別」に見てみると、実は、築30年超の中古マンションは人気が高まっています。築31年以上の中古マンションだけが構成比率を10年前の4.8%から18.2%へと4倍に伸ばしています(下図の黄色部分)。特定の築年数に偏在した格好で、中古マンション人気が顕現化しているのです。

中古マンションの築年帯別の構成比率の推移

 

同様の傾向は築30年超の中古戸建て住宅にも当てはまり、高経年住宅全般に需要が広がっていることが分かります。一体どうしてなのか、とても気になるところです。

そこで、次ページでその理由を探ってみることにします。


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